塾業界を目指す就活生の皆さんへ ①

塾業界で働くことを希望する就活生の皆さんへ

3月1日、18年卒生の就職活動が解禁され、会社説明会がいっせいに始まりました。就活生の皆さんも、いろいろな学習塾の会社説明会に参加して、自分が入社したい企業を絞り込んでいると思います。6月1日から企業の面接・選考が解禁されましたが、リクルーターに話を聞くという形で、非公式で面接をしている企業も多いので、中にはすでに採用内定をもらっている方もいるのではないでしょうか。

学習塾といってもいろいろな会社があります。  それぞれに独自の企業風土や企業文化を持っています。なかには過酷な労働環境のところも存在します。入社後『こんなはずではなかった』と後悔しないためにも労働条件や職場環境がブラックな職場はできるだけ避けるべきだと思います。 そこで学習塾業界を希望する就活生の方や、将来学習塾への就職を考えている方のために、 学習塾の会社説明会で注意すべき点や会社を選ぶときに見極めるべき点について何回かに分けて説明していきます。就職先として学習塾を希望される方に向けての内容ですが、学習塾以外の会社を受ける方にも参考になる点もあると思います。

今回は長く働ける職場を選ぶためには、その会社の採用情報のどこを見極めればよいのか、そのポイントについて説明します。

最初の就職先は社会人としての第一歩を踏み出すための貴重な場所です。 ここで失敗しないためにも、学習塾業界と企業研究を十分におこない、労働条件や職場環境について少しでも疑問がある場合は、納得できるまで遠慮なく採用担当者に質問しましょう。 こう書くと、その会社から内定がもらえないのではと考える方もいるかと思いますが「自分が就職する会社を選ぶ」ことは遊び半分の生半可な意識ではできないので、誰もが真剣にならざるを得ません。 したがって会社の採用担当者も就活生からの、職場の労働環境についての質問や疑問には、たとえそれが自社に不利な内容であったとしても隠すことなく正直に説明する義務があります。この点について、いい加減な対応をする会社は、できるだけ入社を避けるべきです。

 長く働ける職場を選ぶための見極めポイント

■新卒社員募集人数を見極める

学習塾に限らずどんな企業を目指すにしても、まず見極めたいのは、その会社の新卒社員募集が単に退職者の人数合わせのための人員補充なのか、きちんとした採用計画に沿った採用なのかということでしょう。毎年、年度末で社員が大量に退職していく会社は、職場環境や労働条件にかなり問題があります。しかし業務を遂行する必要上、それらを放置したまま新卒社員を募集している会社もあります。

そこでポイントとなるのが「募集人数」です。その企業の社員数に対して毎年どのくらいの新卒社員を募集しているのか。その人数をチェックします。新卒社員の募集人数がその会社の社員数の1割を超えるような場合。例えば正社員数300人程度の会社で、毎年の募集が30名以上ある場合は注意が必要です。中には退職することを前提に毎年大量に新卒社員を採用して、その一部が辞めずに残ればよいというやり方で採用している会社もあります。

毎年大量に社員を募集する学習塾は、 大規模な校舎展開や新規事業などの計画があり、 そのため人員を増やす必要があるケースも考えられますが、  校舎展開もなく新規事業もないのに大量に募集をかけるのは、毎年社員が大量に退職しその穴埋めのために新卒社員を募集していることも考えられます。 過去数か年の募集・採用数はその会社の求人情報で知ることができます。業務を拡大していないのに、新卒社員の募集人数がその会社の社員数の1割を超えているような場合は・・・

『御社では社員数に比べて、毎年多くの社員を募集していますが、理由は何でしょうか?』 と採用担当者にその理由を聞いてみましょう。

担当者の説明に納得できないなら、その会社への入社は避けた方がよいでしょう。

 

■社員の離職率・離職理由を見極める

学習塾・教育支援業の入社3年以内の離職率は47.3%(平成28年)と、全産業平均の31.9%に比べ、残念ですがかなり高いのが実状です。ですから自分が入社を希望する学習塾の離職率は必ずチェックすべきでしょう。 『就職四季報』を見ると学習塾でも主に株式公開している企業はデータが掲載され離職率が記載されている会社もありますが、NA(回答なし)と表記しているところもあります。また学習塾は大手でも就職四季報に掲載されていない会社も多いです。入社を希望する会社が、入社3年以内の離職率を公表していない場合は・・・

『御社の入社3年以内の離職率と離職理由を教えていただけませんか?』 採用担当者に率直に質問しましょう。

会社にとっては、就活生に離職率などのネガティブな情報を開示することに抵抗があるのは事実ですが、ここで変に隠蔽したりせず正直に回答する会社の方が信用できます。

 担当者が離職率や離職理由を教えてくれなかったり、ごまかしてくるようなら、その会社への入社は避けた方がよいでしょう。

 そして、自分が入社を希望する会社の実際の離職率が高かった場合には・・・

『御社では離職率改善のために、どのような取り組みをおこなっているのですか?』と採用担当者に質問しましょう。

担当者が答えられず、説明が曖昧なら、社員の離職率を減らすために何もしていないことになるので、その会社への入社は避けた方がよいでしょう。

なお社員の離職理由について尋ねたときに「結婚して寿退社する女性社員が多いから」と説明する場合も注意が必要です。 学習塾は社員の男女比率では女性の割合が比較的高いのも特徴ですが、結婚しても仕事を続ける女性が多い現在、入社して数年程度で寿退社する女性社員がそれほど多いとは思いません。ブラックな職場を離職する場合、会社に対しては誰も本当の離職理由は言いません。 何かあるなと思った方がよいでしょう。

 

■社員の定着率を見極める

長く働ける職場かどうか見極めるために離職率と同じくらい重要なのが社員の定着率です。 これは社員の年齢構成つまり全社員の中で20代、30代、40代、50代の社員がそれぞれ何人いるのかを調べればわかります。 例えば創業から数十年経過している学習塾で、20代社員が最も多く、30代はほんの少し、40代以上はほとんどいない会社の場合、実際には20代の終わりまでに多くの社員が退職しており、社員の定着率が低いことがわかります。

社員の定着率は、その会社の社員の平均年齢でもわかります。 全世代の年齢バランスがほどよく取れていれば、社員の平均年齢は30代後半くらいになります。創業してかなりの年月が経つのに、社員の平均年齢が20代後半ならば、社員の定着率は低いと言わざるを得ません。

『御社では、30代以上の社員は全体の何%くらいいますか?』

『御社では、30代以上の社員の方は、どのような役職に就いているのですか?』

『御社では、中高年社員の方は、どのような業務に就いているのですか?』

『御社で勤務する社員の平均年齢はどのくらいですか?』

などのように採用担当者に質問してみましょう。

30代以上の社員(特に中高年社員)の割合や社員の平均年齢が低い会社は入社を避けるべきでしょう

 

■入社後の研修体制を見極める

社員を「人材」と見なす会社は、入社後にどのようなキャリアを身につけ、ステップアップさせていくのか、しっかりとした考え方や視点を持っています。入社後のキャリア形成のための研修・教育体制も、その時期、対象者、内容、目的なども計算して組み込まれています。したがって社員の研修・教育体制が行き届いている会社は、長く働ける職場だと言えます。

これに対し社員を単なる「労働力」とみなしている会社は、社内研修に目的や計画性が全くなく、内容も思いつきや行き当たりばったりでおこなわれていることが多く、また部下を持つ管理職に対する研修がまったくおこなわれていないこともあります。したがって、内定者に対する研修・教育制度はもちろん、入社後の職務経歴に応じた各段階での研修制度や教育制度が整っている会社であれば、社員の育成を真剣に考えていることになり、社員を使い捨ての労働力ではなく、人材としてみなしていることになります。

学習塾の場合は、教務職では授業研修が中心となります。先輩教師の授業見学と模擬授業を行い並行して指導教科の内容を学びます。また企業理念や社員としての心構えなどに関する研修もあります。 内定者研修は翌年の3月から本格的に始まるところが多いです。3月初めから春期講習をはさんで研修が行われ、4月に入社という感じです。

ちなみに学習塾におけるキャリアのモデルコースは、平社員 ⇒ 小規模校舎の教室長(入社3年程度) ⇒ 中~大規模校舎の教室長 ⇒ エリアマネージャー職 ⇒ 教務部門(小中部・高校部など)の統括責任者 というコースが一般的です。 学習塾は実力主義を取っている会社が多いので、教室長として生徒数を増やし、教室の売上を伸ばせば出世コースに乗ることができます。

注意すべきなのが、内定者研修と称して夏期講習からアルバイト講師として校舎勤務を強制してくる場合もあることです。学習塾では講習期間中は人手が足らなくなることが多く、学生バイトの代わりに内定者を使うこともあります。現場経験が積めるし時給も出るので一概には言えませんが、内定者研修という名目で入社前にアルバイトとしての勤務を強制してくる場合は、その会社は社員を都合よく働かせるだけの労働力と考えている可能性もあると思います。

また「実力があれば、入社してすぐに教室長(管理職)になれる」ことをうたい文句にする会社も注意が必要です。学習塾では新卒で入社して現場でキャリアを積み、早くて2~3年後に教室長になるケースが一般的です。入社してすぐに教室長になれるような会社は、教室長がすぐにやめてしまうブラックな職場かもしれません。

したがって・・・

『御社では、入社前にどのような研修があるのですか、研修ではどのようなことを学ぶのですか?』

『御社では、入社後のキャリア形成のために、どのような研修・教育体制があるのですか? そこではどのようなことを学ぶのですか?』

『御社では、入社後何年くらいで教室長などの管理職に就くことができますか?』

などと、入社前の研修も含め、入社後にどのようなキャリアを身につけステップアップしていけるのか。研修形態や研修内容などは具体的にどのようになっているのか。納得いくまで採用担当者に聞いてみましょう。

 入社後の研修・教育体制が「見えない」会社、キャリアデザインが具体的にイメージできない会社は、入社を避けた方がよいでしょう。

 

次回は「労働時間、休日休暇を見極めるポイント」について説明します。

私たちは学習塾を志望する就活生の方からの相談や質問、情報提供などを受け付けています。eisu groupやワオ・コーポレーションへの入社を希望される方だけでなく、他の学習塾を志望する方もOKです。

学習塾業界の実際の労働条件、職場環境についての相談、質問等がありましたら、サイト内の「お問合せ・相談」のページよりメールにて連絡して下さい。

 

 

 

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塾業界を目指す就活生の皆さんへ ①” に対して2件のコメントがあります。

  1. T. より:

    関東地方にある社員数が数百人規模の大手塾で正社員として約20年勤務していましたが
    会社からのパワハラと退職強要により退職に至りました。

    私の勤務していた塾ではタイムカードがなく、手書きの出勤簿でした。
    例えば今日は8時間勤務でしたら、14時出社、23時退社と記入しなければなりません。
    ですからほぼすべての社員の残業時間がゼロとなり、たとえ労基が入っても大丈夫のようなシステムになっています。

    これでは過労死があったとしても、過労死だとは認定されないと思います。
    勤務時間外の研修や保護者面談がありますが、これも正規の残業代が支払われません。

    それ以外の問題点としては
    有給取得は理由をきかれ業務閑散期でも却下され、全く取れない。
    講習中は時間割が詰まっていて休憩時間がない。
    会社の考え方として「教師は教室で血管が切れて死ねれば本望だ」という労働観がある。
    社長が退職する気持ちもない社員に「一身上の都合」で退職届けを書かせる。
    社内に労働組合はあるが完全な御用組合。労組に訴えると逆に昇進に響く可能性がある。
    残業代は支払わない。というより残業は殆どの社員がしていないという巧みなシステムが機能している。
    部長クラスの40代社員の2人が死亡。うち1人は亡くなる前1年以内に午前中~終電以降の勤務がかなりの割合であった。

    こんな環境で働いているみなさん、声をどんどん上げてほしいです。
    このような会社の考え方が変えていくため、頑張りましょう!

  2. 元塾人 より:

    Are you ambitious enough?

    (塾就活生に思うこと)

    私は1980年から1992年の生徒数拡大期、バブル経済期に大手予備校教員として生計を立てていました。その当時、個人塾から企業型の塾が興隆してきました。鈴鹿英数はじめ国立学院、ナガセ、教育総研(現ワオコーポレーション)、さなる学院などがその先駆けでした。
    塾を就職対象として社会に認知させた創業社長の皆さんの功績は大きいです。

    18歳人口は1992年をピークにここ数年は120万人で増減を繰り返してきましたが
    2018年からは急減期に入ります。

    以前は一校舎千名で利益率30%を超えるケースも珍しくありませんでした。
    塾社員はこのような環境の中で授業以外に個別カウンセリング、保護者面談、教育セミナー、ガイダンス、広報作成、人事マネジメント、校舎経営に携わり、校舎展開に比例してステップアップし校舎責任者のポジションを獲得しました。つまり塾と言えども通常の会社と同じようにキャリアを積める環境がありました。質的にもかなり高度な内容でもあり、それが塾人の矜持でもありました。

    しかしバブル崩壊から四半世紀を経た今、少子高齢化の影響をまともに受けて集合授業スタイルの塾では教育インフラが過剰となり、利益を産みにくい体質となってきました。そして塾は個別指導や映像授業が主流となりました。
    この変遷に応じて塾での仕事内容も管理業務が主流になり生産的なものではなくなってきたように思います。

    塾へ就職される皆さんは、例えば50名規模の校舎で校舎責任者となったとして、この環境でどのようなキャリアを積めるか。
    30代 40代を過ぎて将来経済的に家族の福祉 幸福追求に責任を持てるか、自問していただきたく思います。

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