前回の記事(その1)の掲載後、就活生の方からの問い合わせが増えました。よく聞かれるのが学習塾では残業や休日出勤が実際にどれくらいあるのか? 残業や休日出勤をした場合に手当等は出るのか? サービス残業は多いのか? といったことです。近年、学習塾業界は長時間労働、サービス残業などの労働問題がマスコミに報道されブラック業界との風評が一部に広がっており、この点において不安を抱いている就活生の方も多いと思います。そこで今回は労働時間、残業を見極めるためのポイントについて説明します。

労働時間、残業を見極めるためのポイント

■残業や休日出勤は普通にあります。

あらかじめ断っておきますが、現在の日本では、学習塾に限らずどんな業種でも残業や休日出勤のない企業はほとんど存在しないということです。

学習塾の正規の勤務時間は会社にもよりますが、始業時刻は午後1時~2時頃、終業時刻は午後10時~11時頃のところが多いです。休憩時間を除いた1日の実働時間は7~9時間程度となります。基本的に夜の仕事なので普通の会社員のように早朝から満員電車で通勤ということはないのですが、学習塾では保護者会、入塾説明会、模擬試験、教育講演会などの各種イベントは日曜日や祝祭日に行われることが多く、その日が公休日となっている場合は休日出勤となります。またシフト制を採用している学習塾では原則土日は出勤で平日が休みのところもあります。夏期や冬期の講習案内を平日朝の生徒登校時に学校の校門前で配布したり、午前中から集合住宅の郵便受けにポスティングしたりすることもあります。また会議や社員研修などは平日の午前中から行われます。終業時刻後に欠席者への連絡、会議、授業研修などを入れている学習塾もあります。お盆や年末年始も受験生向けの特別講習が入れば出勤となります。

したがって正規の勤務時間以外に休日出勤を含む時間外労働は原則としてあります。ただしこれは学習塾を志望する就活生の方もある程度は認識しているのではないでしょうか。見極めねばならないのは残業や休日出勤の有無ではなく、無茶な長時間労働はあるのか。残業代などの手当(時間外賃金)は働いた分きちんと支払われるのかということでしょう。いくら働いても残業代が全く出ず、正規の勤務時間以外の勤務は全てサービス残業となるような会社に入社して後悔しないためにも、しっかりと見極めることが必要です。

したがって、会社説明会などで『御社では残業や休日出勤はありますか?』と聞くのは野暮です。前述したように学習塾にも残業や休日出勤は普通にあるので聞かれたほうも返答に困るでしょう。逆に『うちは残業や休日出勤はほとんどありません』『うちは業界一のホワイト企業です』と答える採用担当者がいたら、何かあると疑ってみた方が賢明です。ここではむしろ、入社希望の会社が時間外労働のための三六協定を締結しているのか、どのような労働時間制度をとっているのかをしっかり確認すべきです。

 

■三六協定(残業協定)を見極める。

労働基準法32条では使用者(経営者)は労働者に休憩時間を除き1週間に40時間を超えて、また1週間の各日については1日8時間を超えて労働させてはならない(法定労働時間)という規定があります。労働者を法定労働時間以上に働かせると労基法違反となり、罰せられます。

そこで会社が労働者に法定労働時間を超える時間外労働や休日に働かせる場合には使用者と労働者とで三六協定(時間外労働にかかる労使協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ることが必要です三六協定を締結していれば法定労働時間以上に働かせても労基法違反で罰せられることはありません。一種の免罰規定といえます。

問題なのは六協定を締結・届出せずに労働者を働かせている会社も存在することです。時間外労働について就業規則に記載され、三六協定の内容も社員に開示・周知されていることも必要ですが、そうなっていない場合もあります。

また三六協定を締結した労働者側の代表者は労働者の中から選挙などの公正な手段で選ぶことが条件ですが、実際は会社側の役員だったり、親睦会の代表者だったりするなど、社員代表としては不適格な人が選ばれている場合もあります。社員のほとんどが「労働者代表」が誰なのか、どのようにして労働者代表に選出されたのか、三六協定の存在すら全く知らないという事例も報告されています。

それから三六協定を締結しているからといって、時間外賃金を支払う必要はないと誤解している使用者もいます。三六協定の締結はあくまで労基法32条の免罰規定であり、残業代の免除にはならない(支払うのが当然)ということをよく認識しておきましょう

 したがって、会社説明会などで

御社では残業協定(三六協定)は締結・届出・周知されておりますか?』

『残業協定の労働者代表の選出方法はどのようになっているのですか?』

『残業や休日出勤をした場合、どのような形で手当が支払われるのですか?』

などのように採用担当者に質問してみましょう。

 担当者の説明に納得できないなら、その会社への入社は避けた方がよいでしょう。

 

労働時間制度を見極める。

学習塾では「変形労働時間制度」を採用している会社が多いです。「1年単位の変形労働時間制」の場合、1年間の労働時間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内で、特定の週に40時間を超えて労働させることができ、また特定の日において8時間を超えて労働させることもできます。講習期間中など繁忙期がある学習塾の使用者(経営者)にとっては残業代を抑制することができる都合の良い労働時間制なのですが、導入・運営するにあたってはいろいろと細かな手続きや制約があります。

1年単位の変形労働時間制を採用するためには、対象となる労働者の範囲、期間内の労働日および各労働日ごとの労働時間などについての労使協定の締結、労働基準監督署への届出が必要となります。また就業規則への記載も必要です

問題なのは、この変形労働時間制の手続きや運用が不適切な会社も存在することです。また変形労働時間制を採用すれば時間外労働は全く発生せず、残業代は支払わなくてもよいと誤解している使用者もいることです。変形労働時間制でも一定の条件を超えれば時間外労働が発生するので、残業代を支払わねばなりません。

 したがって、会社説明会などで

『御社ではどのような労働時間制度を採用しているのですか?』

『労働時間制にかかる労使協定の締結、届出はされていますか?』

『御社の労働時間制ではどのような場合に残業となるのですか?』

などのように採用担当者に質問してみましょう。

 担当者の説明に納得できないなら、その会社への入社は避けた方がよいでしょう。

 

■固定残業代について見極める

学習塾の中には『固定残業代』の制度を採用している会社もあります。これはあらかじめ基本給もしくは手当の中に残業代を含めているものです。例えば求人サイトの労働条件の項目に、基本給の中に30時間、3万円分の固定残業代を含むという記載があれば、毎月30時間までは残業しても基本給の中に残業代が含まれているので、残業代は一切出ないことになります。これも会社にとっては残業代を抑制する方法としてよく知られています。

この例のような条件で求人を行う会社は、残業が毎月30時間以上あることが多く残業が常態化している場合もあるので注意が必要です。また残業代には本来、法定外残業25%とか休日出勤50%とかの割増率がありますが、固定残業代はこの割増率を全く考慮していません。悪質な場合になると、求人条件では固定残業代について全く触れていないのに、4月の入社直前にいきなり「うちは基本給の中に固定残業代●万円を含んでいる」と後出しジャンケンのように説明してくる会社もあります。

 本来、残業代はイレギュラーな労働の対価として支払われるものです。だから基本給を示したうえで、あくまでそれとは別に残業代を支払うと規定することもできるはずです。そうしないで基本給の中に残業代を含ませ、他社より基本給が高いように見せかけるやり方には問題があると思います。

したがって、会社説明会などで

『御社では固定残業代の制度を採用しているのですか?』

『月に何時間分の残業代が基本給(または手当)の中に含まれているのですか?』

などのように採用担当者に質問してみましょう。

 担当者の説明に納得できないなら、その会社への入社は避けた方がよいでしょう。

 

次回は「休日休暇を見極めるポイント」について説明します。

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