前回の続きです。

皆さんの勤務する学習塾では午前中からの会議や研修、ポスティングのための時間外勤務、日曜日の保護者会や進学説明会などの休日出勤はあるでしょうか。どこの学習塾でもこれらは普通にありますよね。勤務時間以外に残業や休日出勤がある職場なら、必ず三六(サブロク)協定をはじめとする労使協定は締結・届出しなければいけません。企業としてこの手続きを適正に行うことなく社員を時間外労働させたら「違法残業」となり、労働基準監督署からの行政指導の対象となります。最近、監督署や労働局では特に「違法残業」についての取り締まりが厳しくなっているので、場合によっては企業名を公表される可能性もあります。

会社が三六(サブロク)協定をはじめとする労使協定の手続きを適正に行なっているかどうかを見極めるには、業や休日出勤は普通にあるのに… ①社内で従業員代表選挙を一度もやったことがない。②社内で従業員代表になっている人を誰も知らない。③三六協定を社内で誰も見たことがない。どれかが当てはまれば勤務する会社が三六(サブロク)協定の締結・届出を適正にしているかどうかは「かなり怪しい」といえます。実際には社員の知らないところで勝手に事務や総務の役職者を従業員代表に任命して書類を作成し労基署に届出している会社も多いと思いますが、これでは適正な手続きをしているとは到底言えません。以下に「適正な手続き」のポイントを説明します。

ポイント1 従業員の過半数代表は選出されているか

従業員の過半数代表は、会社(経営者)が一方的に指名することはできません。また管理監督者は従業員代表になることはできません。その職場に勤務し、かつ管理監督者ではない人の中から民主的な方法で選出するのが原則となります。管理監督者とは労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指し、一般的には部長クラス以上の幹部社員が該当するとされるので、学習塾では教室長クラス以上の役職者は従業員代表には該当しません。一般社員、チーフ職、係長クラスなどが従業員代表の要件を満たします。そして該当者の中から従業員代表に立候補する人を募り、経営側社員を除いた全従業員の選挙で代表者を選びます。選出は選挙と同じように投票用紙を使った無記名投票もしくは挙手による投票となります。経営者と幹部社員は選挙および投票に関与・干渉してはならないとされています。

また従業員の過半数代表は事業所別・部門別に選出するのが原則です。したがって全国展開しているような大手学習塾の場合、県別や地域別に、さらに小中部・高校部・個別指導部など事業部門に分けて選出されなければいけません。5年前、eisuでも会社創立以来初めて従業員代表選挙が行われました。この時は挙手による投票でした。労働組合から立候補した社員に投票した人が会社にチェックされ、後に露骨な嫌がらせを受けました。その結果どうなったか? 組合に加入する人が増え、会社への団体交渉や抗議行動などの闘争がしやすくなりました(笑) 挙手投票はこの1回限りで今は無記名投票による選出が行われています。

皆さんの学習塾ではこのような原則に従って従業員代表が選出されているでしょうか。従業員代表が誰なのかわからない。職場で従業員代表選挙などしたことがない場合は、会社(経営者)が一方的に幹部社員を指名し、社員が全く知らないところで会社の都合のいい内容で勝手に三六(サブロク)協定が締結されている可能性が高いと思います。

ポイント2 協定書は社員に周知されているか

いろいろな地域の塾人たちと話していると、自分の職場の労使協定を見たことがない方が多いのに驚かされます。特に三六(サブロク)協定は労働時間数や残業・休日労働にかかわる重要な協定なので労働基準法によれば職場の全社員が自由に閲覧できる状態にある必要があります。

協定書が社員に周知されていないときは会社に見せてもらうのがベストですが、いろいろと理由をつけて閲覧させてくれない場合が多いです。会社がこのような対応をしたら即アウトですが、こうした場合は勤務する学習塾の本社や本部のある地域を管轄する労働基準監督署に直接出向いて『労使協定の書面を会社が見せてくれない』という理由を伝え、閲覧させてもらいましょう。一つ注意ですが、もし会社で閲覧できた場合は、書類に監督署への届出済の印が押してあるかどうかを必ず確認するようにして下さい。届出済印がなければ監督署に「未届け」となり重大な法律違反となります。

ポイント3 協定書は監督署に届出されているか

三六(サブロク)協定の締結後、勤務する学習塾の本社やエリア本部のある地域を管轄する労働基準監督署への届出が必要です。もし会社が勝手に三六(サブロク)協定を作成しても監督署でしっかり審査したうえで受理するのではないのか?という質問もよく聞きますが、実際のところ所轄の監督署や担当者次第です。労働基準監督署でも厳しく審査するところもあれば審査が甘いところもあり一概には言えません。監督署の担当者によっても違いがあります。表面上、形式だけ整っていれば受理してしまう場合もないとは言えません。

内容や届出済なのかを確認するには勤務する学習塾の本社や本部のある地域を管轄する労働基準監督署に申し出て閲覧させてもらいましょう。その時、必ず社員であることを確認できる社員証・健康保険証等の証明書を持参するようにして下さい。なお監督署の担当者によっては『監督署では見せられません。会社に見せてもらって下さい』などの理由をつけて閲覧させてくれないこともあります。そのときは私たちか職場地域のユニオンまで相談して下さい。もし監督署で閲覧を請求しても見せてくれなかった場合は、担当者の名前と部署名を聞いておき、厚生労働省に電話で直接クレームを言うのもありだと思います。以前これをやったらかなり効果がありました。事なかれ主義の担当者を動かす手段の一つです。

三六(サブロク)協定の締結・届出・周知は絶対必要

残業や休日出勤がある職場なら必ず三六(サブロク)協定の締結と監督署への届出が絶対必要です。自分の勤務する学習塾で残業や休日出勤は普通にあるのに協定内容が周知されていない、従業員代表が誰だかわからないときは、会社が三六(サブロク)協定の締結・届出を怠っているか、もしくは法令通りに適正な手続きをしていないことも考えられます。こういう会社は長時間労働を強要するブラックな職場環境であることも多く、また多額の未払い残業代が存在していることも考えられます。

もしも皆さんの勤務する学習塾がこのような状況にあれば『違法』な労働を強いられている可能性があるので、手遅れにならないうちに早急に対処する必要があります。対処法としては地域を管轄する労働基準監督署に直接申告するか、私たちか職場地域のユニオン(一般労働組合)まで相談して下さい。力になりますよ。

三六(サブロク)協定なんて関心がない、自分とは関係ないと思っていると、結果として長時間労働が強まり、ますます職場環境の悪化を招くことになります。したがって自分の身を守るためにも三六(サブロク)協定やその他の労使協定について、締結の要件や労基署への届出が必要かどうかなどを詳しく知っておくことが最低限必要です。

最近、監督署での労使協定の審査が厳しくなったという声や、受理するときに従業員代表の選出方法について細かく聞かれたという話も聞きます。労使協定の締結・届出をせずに従業員に違法残業させたことが原因で監督署に摘発され、従業員から大規模な未払い賃金請求訴訟を起こされた会社もあります。

ここ数年、多くの人が「ブラック企業」「ブラック労働」に高い関心を持ち、できるだけそのような会社を避けるようになってきたことは良い傾向だと思います。これからは会社として労働諸法規を遵守し、働く者の労働環境の改善に真面目に取り組んでいく学習塾だけが、そこで働く社員のみならず、地域の生徒や保護者からも信頼され、生き残っていくのではないでしょうか。