改正職業安定法の施行

4月から学習塾に入社する方へ。これから学習塾への就職活動を予定されている学生の方へ。今年の1月1日より改正職業安定法が施行されたことはご存知でしょうか。これは会社が実際とは異なる虚偽の労働条件を提示して社員を募集し、入社後に初めて本当の労働条件を知らされるという求人詐欺に一定の歯止めをかけるのが目的です。
このサイトには全国の塾人からの情報提供や相談などがありますが、その中には新卒社員の方から『会社説明会で提示された労働条件と実際の労働条件がかなり違うけれど、どうすればよいのか』という求人詐欺に関する事案もあります。新卒生の労働条件に関しては基本給や各種手当についての相談は少ないです。やはり多いのは労働時間や休日休暇、固定残業代や時間外賃金に関するものですが、試用期間中は契約社員扱いとする承諾書へのサインを強要されたという相談もよくあります。ここで問題なのは実際の労働条件が入社直前の3月後半か入社後に提示される(わかる)ということです。

労働条件の後出しジャンケン

就活生に対しあらかじめ会社説明会などで、入社後の労働条件をきちんと説明してあり、就活生がその条件に納得したうえで会社と雇用契約を結び、入社を決めているのなら問題ないですが、他の会社への内定を辞退しその会社に入社を決めた後に、あたかも後出しジャンケンのように本当の労働条件が提示される。勤務して初めて実際の労働条件を思い知らされる。こういう労働条件の後出しジャンケンは学習塾だけでなく、さまざまな企業でまかり通っています。こんなことをされると新卒社員は入社した会社に強い不信感・不安感を持ちます。こういう企業は毎年、社員を大量に採用して使い捨てるブラック企業である可能性が高く『ブラック企業を見極めろ』的なサイトにはこのような企業は入社を避けるべきだと書いてあります

しかし従来は、求人票に記載されるのは賃金、労働時間、休日休暇、社会保険の有無等で、固定残業代、裁量労働制、試用期間やその間の雇用身分については記載義務がなく、求人票に記載した労働条件を変更しても(もちろん悪い方に)求職者への通知義務はありませんでした。したがってブラック企業はここをうまく利用して求人詐欺を行うことが可能でした。今までの求人詐欺に関するケースは、雇用契約を締結した後になるので、入社後の労働条件が労働基準法に明らかに違反する場合を除き、労働基準監督署に相談しても解決は難しく、新卒社員にとっては入社してすぐに「騙された」と思っても、大学卒業後に再び就職活動を始めるのは負担が大きいため諦めてしまう人が多かったと思います。今までは求人詐欺にあっても労働者は諦めてそこで働くか転職するしか手段はなかったのではないでしょうか。

職業安定法の改正ポイント

今年1月1日に施行された改正職業安定法では実際とは異なるウソの労働条件を提示して社員を募集する求人詐欺がやりにくくなりました。違反すれば行政指導(改善命令・勧告・企業名公表)や罰則(6カ月以下の懲役・罰金)または就職・転職サイトへの求人広告の掲載不受理などが行われます。なお、この法律は新卒生だけでなく転職者を含むすべての求職者が対象となります。

求人票に明示すべき労働条件の範囲を拡大・明確化
求人票に記載すべき内容が追加されました。今までの記載事項に加え、新しく試用期間、試用期間中の労働条件の明示。手当の中に残業代を含む場合はその時間数と金額、計算方法の明示。裁量労働制の明示。勤務時間を超える時間外労働の割増賃金の支給を明示することなどが追加されました。
⇒ 固定残業代、裁量労働制など今までグレーだった部分が求人票に明示されるようになりました。また入社後の試用期間中に契約社員扱いとする場合はそのことを明示しなければいけなくなりました。

労働条件の明示に際しての遵守事項を規定
会社が虚偽または誇大な労働条件を提示してハローワークや職業紹介事業者に求人募集した場合。6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科す。
⇒ ウソの労働条件で求人募集したら違法となります。求人募集の際に提示した労働条件がのちに虚偽だと判断された場合、求人広告を出した段階までさかのぼって処罰されます。

労働条件を変更した場合の通知義務
会社が募集時の求人票に記載された労働条件をその後変更した場合、速やかに労働条件の変更内容を書面で求職者に明示すること。
⇒ 変更内容を明示せずに雇用契約を結んだ場合は行政指導の対象となり、従わなければ企業名が公表されます。つまり労働条件の後出しジャンケンができません。

内定時に労働条件を内定者個人に書面で交付
新卒生の採用について、原則として内定時に労働条件の書面交付が行われるべきと指針に規定されました。
⇒ 現在では4月の入社式当日かその直前に労働条件通知書が渡されることが多いと思います。労働条件が求人票に記載されたものと同じならば問題ないですが、異なっている(悪い方に)場合には、この段階からは就職活動のやり直しはできません。そこで新卒生には内定時(10月1日~)に労働条件を書面で内定者本人に交付することが規定されました。これは2019年の新卒生(現在の大学3年生)から対象となりますが、きちんとした企業では今年の内定者(大学4年生)に対しても行なわれています。

今回の改正職業安定法により、募集時の労働条件について、より詳しい記載が求められるようになります。企業に応募する際の労働条件の明示がより詳しく正確になるということは、就活生にとっては歓迎すべきことだと思います。
企業の採用に関する労働条件を明確化、厳格化することで求人詐欺やそれによる求人トラブルをできるだけ抑止する内容になっていますが、細かく見ていくと問題点や課題もあり、この法律により求人詐欺によるトラブルが完全になくなるわけではありません。やはり学習塾でもそれ以外の業種でも幅広い情報収集と深い分析が必要となります。近日中に学習塾での労働条件をどのように見極めるか。その具体的方法についても書こうと思います。