連続勤務は何日までか?

全国の学習塾で働く塾人の皆さんへ。

昨年の年末、首都圏の大手学習塾で業務による過労死や連続勤務で精神疾患を発症した元社員の方の労災認定の記事が全国で大きく報道されました。

学習塾での連続勤務の背景

学習塾の業態においては冬期講習が始まる12月から、中学、高校、大学入試のシーズンを経て新年度が始まる3月頃までが1年間で最も多忙で、この時期に過酷な連続勤務が発生しやすいということを以前ブログで指摘しました。

また学習塾の現場では「生徒第一」という考え方が職場の理念・労働観として確固として存在し、自分を犠牲にしても「生徒のために」頑張る人が評価・賞賛される傾向にあり、経営者もこれを当然だと考えています。

この「生徒第一」という理念を否定するつもりはありませんが、自分の私生活や健康を犠牲にしたうえで常に「生徒第一」「生徒へのサービス最優先」を求められるのであれば労働環境としてあまりにも偏り過ぎていてバランスが悪いです。

このような職場環境では少なくとも『人らしく働く』『長く働く』『仕事を通じて成長する』ことはできないでしょう。学習塾業界において社員の過労死や精神疾患の問題が発生しても、結局、長時間労働が一向になくならないのはこんなところにも原因があります。

学習塾での過酷な長時間労働、連続勤務をなくすには、やはり職場内で社員がユニオン(一般労組)に加盟し労働組合を結成し会社に要求すべきだと思います。

eisuも2012年以降に当労働組合が社と闘争し労働時間や有休取得制度を改善させなければ、過労死や精神疾患を発症する社員が出ていたかもしれません。

労働基準法で認められる連続勤務日数の上限

ところで、そもそも労働基準法では連続勤務はいったい何日まで認められているのでしょうか。労働基準法第35条にある休日に関する規定では次のように意外とシンプルに書かれています。

1.使用者は労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えねばならない。

2.前項の規定は4週間を通して4日以上の休日を与える使用者については適用しない。

就業規則に特段の記載がない場合は1週間の始まりは日曜日、終わりは土曜日となります。そうすると第1項が適用される職場の場合、連続勤務は12日が最大となります。

ここで「あれっ、法律上の連続勤務は6日までじゃないの?」と思った方も多いのではないでしょうか。しかしもう一度第1項の『毎週少なくとも1回の休日を与えねばならない』という部分の『毎週』に注意して読んでみると次の例のようになります。

たとえば週休1日制(日曜日が公休日)の職場において、第1週目は日曜日が公休日となります。ここで1日休みます。そして第1週の月曜~土曜日まで勤務します。

日曜日から第2週目に入りますが、第2週目の日曜日から金曜日まで勤務して土曜日に休みが与えられるならば『毎週少なくとも1回の休日を与えねばならない』という条文に合っており、なんと労働基準法違反にはなりません!

ただし1日8時間、1週間あたりの労働時間が40時間を超える場合(上の例では毎日所定労働時間働いても確実に超える)は労働基準法第32条が適用されるので、会社は36協定(時間外・休日出勤に関する労使協定)を従業員代表と適切に締結し労働基準監督署への届出が必要となります。

また労働者に割増した時間外手当および休日出勤手当を支払わなければいけません。もちろん労働者は会社に対して残業代等を請求できます。

したがって塾人の方は原則として連続勤務日数の上限は12日まで。13日以上は違法。ただし残業代は別に支払われるべきと覚えておいて下さい。

ころで学習塾では労働時間制として1年単位の変形労働時間制度を採用しているところが多いですが、この場合は条件が変わり第2項が適用されます。

そこで第2項の『4週間を通して4日以上の休日を与える』という部分の『4週間を通して4日』を注意して読んでみると、やり方によっては連続勤務日数の上限は何と24日となります。たとえば次のようなケースです。少し恐ろしくなります。

まず第1週が始まる直前の土曜日をお休みとします。そして最初の第1週の日曜日から最後の第4週の火曜日まで全て勤務させ(連続24日!)、最後の第4週の水曜日~土曜日をお休みとします。すると『4週間を通して4日以上の休日を与える』という条文に合いますね。したがって労働基準法違反にはなりません。

この例では目いっぱい働かせて最後にまとめて休みを与えるというケースです。このような勤務をさせている学習塾があるかは知りませんが、現在の労働基準法の条文を経営者側がうまく利用すれば、条件次第では社員を24日も連続勤務させても法律違反にはならないというケースも可能なのです。

もちろんこのケースでも労働基準法第32条が適用されるので、会社は36協定の締結や労働者に時間外手当等を支払う必要があります。

なお1年単位の変形労働時間制の職場なら1か月あたりの時間外労働の上限は42時間まで。会社が従業員代表と36協定の締結はもちろん変形労働時間制に関する労使協定を締結して労働基準監督署に届け出る。就業規則に規定し従業員に周知させる。などいろいろな制約があるので上のような極端なケースで社員を働かせることは難しいと思いますが・・実際どうなんでしょうか?

労使協定が存在しなかったり従業員代表が誰だかわからないような職場でこのような働かせ方をさせているなら即アウトです。

もし1年単位の変形労働時間制を取っている学習塾に勤務しているなら、会社が労働基準監督署に毎年届け出ている「1年単位の労働時間制に関する協定届」の「特定期間中の最も長い連続労働日数」という項目が何日になっているか確認しておくとよいです。

マトモな会社なら6日か、長くても12日と記載されているはずです。もし会社が閲覧させてくれないならかなり怪しいです。違法労働になっているかもしれませんよ。

法律の遵守と会社の民事責任は別問題

現在の労働基準法では、経営者が「法律の抜け穴」を上手に利用すれば労基法を表面的には遵守しながら社員を過労死や精神疾患に追い込むような働かせ方も可能なのです。学習塾で働く塾人にとって、これでは人間らしい働き方、適切な職場環境とは到底言えません。

数十日間におよぶ連続勤務は言うまでもありませんが、やはり法律の条文通り、どんなに忙しくても週に1日は休むことを認めない会社や、どんな理由であれ有給休暇を認めようとしない職場は異常だと思います。

しかしいくら法律に違反していないからといって会社が民事上の責任をまったく問われないことはありません。なぜなら法律の遵守と民事上の責任はまったく別問題だからです。

したがって経営者が「うちの会社は労働基準法に違反していない」といくら弁解しても、過労死や精神疾患に追い込んだ社員の遺族や元社員からの民事的な損害賠償請求を免責されることにはなりません。

eisuでもほんの5年ほど前までは14日以上の連続勤務もありましたが、今は労働組合が抑止力として機能しているので12日以上の連続勤務はほぼなくなりました。

しかし今年の冬期講習中(特定期間中)に小中部の一部社員に13日以上の連続勤務が発生したので、この問題の解決に向けて2月19日に津本社で社と労使協議を行い、他の問題も含めてすべて改善させました。

会社の都合の良い働かせ方から自分の身を守るためにも、労働基準法や労働契約法などを過去の判例も含めて理解し理論武装しておくことも必要ですが、職場に労働組合を作ることが一番の早道だと思います。

塾人の皆さん。過酷な連続勤務で疲労困憊していたら、私たちか職場の近くのユニオンまで、ぜひ相談して下さい。力になりますよ。

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