来年3月からの就活で学習塾への就職(入社)を考えている大学3年生の方、または学習塾業界への転職を考えている方へ。

前回の続きです。職場の労働環境がブラックかどうかを見極めるために、リクナビ・マイナビ等の求人サイトに掲載されている各社の求人情報、採用データのどこをチェックすべきかを説明していきます。これらのチェック項目は学習塾以外の会社でも使えます

求人データのココをチェック①

リクナビ、マイナビ等の求人サイトでは、入社したい会社の採用データについて、以下の項目の記載がどうなっているのか。記載の有無も含めてチェックします。ここでいう「社員」とは正規職員を指し、アルバイトや短期の契約社員、派遣社員は含みません。

1.採用予定数と採用者数

採用予定数はその年に何名の社員を募集しているのか。採用者数はその会社が何名の社員を採用したのか。その人数になります。男女別人数を掲載していたり過去3年間の採用人数を開示している会社もあります。

ここで毎年100名以上の大量の社員を募集して、大量に採用している会社は注意が必要です。全国や海外に事業展開しており、社員が数千人もいるような会社ならともかく、たとえば企業規模や社員数もそれほど多くはなく、社員を大量に募集することが必要な業務拡大や新規事業計画(学習塾なら大規模な新規校舎展開・業務エリアの拡大)もないのに、毎年大量に社員を募集している会社は職場の労働環境がブラックで毎年の離職者かなり多く、人員補充や業務を維持するために大量の社員を募集している可能性も考えられます。

こうした会社の中には、社員を大量に雇い、自社の過酷な労働環境に耐えられる人だけを残すという方針で採用が行われている場合も多く、人材の使い捨てが横行していることもあります。

したがって、企業規模や事業規模がそれほど大きくない、新規事業の予定もないのに毎年社員を大量に募集・採用している会社への入社は避けるべきだと思います。

 

2.社員の平均勤続年数・平均年齢

創業して数年の会社であれば当然そこで働く社員の勤続年数は短く、平均年齢も低いと思いますが、大手学習塾には50年以上の歴史を持つ会社も多いです。もし創業して数十年経っているのに、社員の平均勤続年数が5年未満だったり、平均年齢が20代後半だったりしたら注意が必要です。

こうした会社では職場の労働環境が過酷で体力のある若い人しか働けないか、労働条件に問題のある可能性が高いです。また、このような会社では社員の人事・評価・社内研修制度などもほとんど整備されておらず、経営者のツルの一声ですべてが決まってしまう場合も多いです。

社員の平均勤続年数が長ければ、短期間で離職する人がいないということなので職場の労働環境は比較的安定していると言えます。また社員の平均年齢が高ければ、年齢や経験に応じてキャリアアップできるような人事・研修制度が整備されており、安心して長く勤められる会社だと言えます。

目安としては社員の平均勤続年数が10~15年以上、平均年齢が30代半ばくらいなら、バランスが取れていると考えておくといいです。学習塾業界には昔から「30歳定年説」なるものが存在しますが、はじめから数年間だけの勤務と割り切るならともかく、1つの職場にできるだけ長く勤めるつもりなら社員の平均勤続年数が10年以上で、平均年齢も少なくとも30代の会社を選ぶべきでしょう。

したがって、創業してから数十年の歴史のある会社なのに社員の平均勤続年数が5年程度だったり、平均年齢が20代後半である場合や、平均勤続年数・平均年齢等のデータが開示されていない場合は、その会社への入社は(数年間だけと割り切って入社する場合以外は)避けたほうがいいと思います。

 

 3.社員の離職率・離職者数

現在、新卒社員の30%ほどが入社後3年以内に離職しているというデータがあります。この30%が入社3年以内の新卒社員の離職率の平均だと言えます。ちなみにこの数値はここ40年ほどあまり変化していません。つまりどんな会社でも約3割の人が入社後3年以内に辞めていくのは昔からの傾向なのです。

入社後3年以内の離職率は業種によってかなり数値が異なり、たとえば学習塾は約50%というデータもあります。

これを見て「かなり高い」と思う方もいると思いますが、特に地方の学習塾では、学習塾の仕事が教員採用の受け皿となっていたり(教員採用試験に合格すれば退職)、20代後半で結婚や出産を機に退職する女性社員が多い(塾講師は夜の仕事なので結婚後は続けにくい)という要因もあって、離職率が高めになるという側面もあります。

したがって、求人サイトで開示された情報で、毎年の離職率が50%以上あったりすれば問題ですが、あくまで離職率を見る場合は、社員の平均勤続年数・平均年齢・毎年の採用者数・育児休暇制度の有無などと関連させて考えるべきでしょう。

社員の平均勤続年数が5年未満で、平均年齢が20代後半、毎年大量に社員を募集・採用しているなら離職率が高いとみて間違いありません。

ところで、離職率や離職者数については求人サイトで開示している会社とそうでない会社があります。離職率を開示していない会社は、労働環境がブラックで毎年大量に退職者が出ていて離職率の開示ができない可能性も否定できません。

したがって最低限、過去3年以内の離職率・離職者数を開示していない会社については、入社を避けるべきだと思います。

 

4.社員の年間休日

社員の年間休日数(公休日数)については、具体的に100日とか120日など、1年を通して「何日」あるのか求人サイトに日数が開示されている会社を選ぶべきです。

学習塾だと部署にもよりますが多いところで100~120日程度、少ないところでは85~96日程度でしょうか。1年は52週あるので週休2日の場合だと年間休日数(公休日数)は104日となります。自分が入社したい会社の公休日が多いのか少ないのかをチェックするには、この104日という日数を目安に考えるといいです。

学習塾では特に教務職(講師職)の場合は、かりに週休2日となっていても毎週必ず土曜日・日曜日に全社員が休日になるとは限りません。学習塾はサービス業なので土曜日・日曜日は出勤することも多いです。また祝日、お盆、年末年始も休日になるとは限りません。

学習塾ではシフト制を採っているところが多く、たとえば毎週日曜日と月曜日、月曜日と水曜日、水曜日と土曜日といったように公休日が社員で異なることも普通にあります。どうしても土曜日・日曜日に休みたい時や、連続して休みたい時には有給休暇の使用が前提となります。学習塾に講師職で入社・転職を希望している方は、この点を納得して入社してください。

ただし求人サイトで単に「週休2日」とだけ記載され、1年間を通した休日数の記載がない場合や、入社後に渡される「社員の年間公休日カレンダー」によると記載されている場合、そもそも休日に関する記載がない場合には注意が必要です。

入社してみると休日数が求人サイトの記載内容とまったく違っていたり、試用期間中だけ週休2日で試用期間を過ぎると週休1日になる会社もあります。これらは改正職業安定法が施行されている現在、明らかに「求人詐欺」に当たり、違法行為となります。

したがって、求人サイトで「年間公休日数は104日」といった具体的な記載がなく、単に「週休2日」「年間カレンダーで規定」などの曖昧な表現をとっていたり、年間休日数の記載がない会社への入社は避けるべきです。

 

5.年次有給休暇・その他の休暇制度

年次有給休暇は労働基準法で認められた労働者の権利なので、かりに求人サイトに掲載がなかったとしても取得は法的に認められます。正社員の場合、入社して半年経過後に10日付与されます。その後勤続年数に応じて付与日数が増えていき、入社して6年半経過すれば年間20日まで付与されます。

付与された年度に使い残した有休日数は最大20日まで次年度への繰り越しが認められます。また2019年度以降は雇用するすべての社員に対して、最低でも年次有給休暇を5日消化させることが会社に義務付けられています。(2019年6月22日の記事「年5日の有給休暇の取得が義務化されました」参照)

たとえば入社7年目以降の社員で、前年度に付与された有給を1日も使わなかった場合、次年度には40日(新規付与分20日 + 前年度の繰り越し分20日)の有休が使用できることになります。また有給休暇は正社員だけの権利ではなく、週当たりの労働日数や労働時間に応じてパート、アルバイト、契約社員などにも付与されます。

しかし会社にとって社員が有休を使用すると職場の労働生産性が下がる ⇒ 会社の利益が減ると考えたり、社員が休んでも賃金カットできないので癪にさわると言った考えの狭い経営者も多いです。そこで社員にできるだけ有休を使わせないよう、あの手この手を使って有休を取らせないようにしている会社もあります。(2017年10月5日の記事「学習塾の休日・休暇の見極めかた」参照)

さて本題に戻りますが、有給休暇の制度について記載がない場合や、単に「あり」とだけ記載されている場合も注意が必要です。実はこの部分の記載は、その会社の経営者が社員の有給休暇(他の休暇制度を含めて)をどのように考えているのかが如実に表れます

記載がないのは論外ですが、「あり」とだけ簡単に記載されている場合でも、入社したらまったく有休が取れない・取らせてもらえないブラックな職場である可能性があります。

そこで有給休暇以外に、たとえば慶弔休暇、育児休暇、介護休暇などの休暇制度の有無をチェックします。同時に社員の有給休暇の取得率や、育児休暇・介護休暇の取得率の記載の有無もチェックします

会社が求人サイトで自社の職場環境をアピールする場合、社員の採用を真面目に考えていれば本来こうした部分について詳細に記載するはずです。特に少子高齢化の進む現代社会において育児休暇や介護休暇の無い会社など考えられません。

したがって、求人サイトに掲載された有給休暇を含む各種の休暇制度について、説明が曖昧だったり、社員の取得率などのデータが開示されていない場合はその会社への入社は避けるべきです。

 

次回は求人データのココをチェック②です。労働時間、固定残業代、試用期間などのチェックポイントについて説明します。