学習塾への就職(入社)を考えている来年度の就活生。または学習塾への転職を考えている求職者の皆さんへ。

前回の続きです。職場の労働環境がブラックかどうかを見極めるために、リクナビ・マイナビ等の求人サイトに掲載されている各社の求人情報、採用データのどこをチェックすべきかを説明していきます。これらのチェック項目は学習塾以外の会社でも使えます

 求人データのココをチェック②

1.週当たりの労働時間・時間外手当(残業代)の有無

労働基準法では1日あたりの労働時間は8時間まで(休憩時間を除く)、週あたりの労働時間は40時間までと規定され、これを超える場合は時間外手当(残業代)の支払いが必要となります。

入社を希望する会社の求人サイトで、会社が採用している労働時間制・週当たりの労働時間数や時間外手当(残業代)の有無について何も記載がない場合には注意が必要です。

労働時間について記載がなければその会社の勤務時間は労働基準法の法定労働時間と同じ1日8時間、週40時間以内だと考えることもできますが、少し待ってください。

常識的に考えて、年間を通して1日も残業がない、休日出勤もないような会社があると思いますか?どんな業界・会社でも残業や休日出勤は年間を通せば必ずあります。

労働時間制や労働時間もはっきりしない、法定労働時間を超えて勤務した場合に時間外手当が支払われるのかもわからないような会社はブラックかもと疑ってみたほうがいいです。

学習塾では社員の労働時間制について「1年単位の変形労働時間制」を採用している会社が多いです。eisuでも1年単位の変形労働時間制を採用しています。

1年単位の変形労働時間制は1年間の総労働時間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、ある特定の週に40時間を超えて労働させることができ、また特定の日において8時間を超えて労働させることが認められており、労働時間を超過した場合でも時間外手当を支払う必要はありません。

学習塾では普段は午後1時~2頃出勤して10時~11時頃退勤となる会社が多いので、週休2日制なら休憩時間を除いた週あたりの労働時間は36~38時間程度になります。ところが夏期・冬期・春期の講習期間中の繁忙期はそれこそ朝8時~夜10時まで連続して勤務することもあります。

このように1年単位の変形労働時間制は年に何回か繁忙期のある業界・会社にとっては残業代を抑制することができる都合の良い制度なのですが、問題もあり導入・運営にあたってはいろいろと細かな手続きや制約があります。(2017年7月10日の記事「塾業界を目指す就活生の皆さんへ②」参照)

したがって、会社の求人サイトで、採用している労働時間制、週当たりの労働時間数、時間外手当(残業代)の有無について何も記載がない場合は、その会社への入社は避けるべきだと思います。

 

2.固定残業代の有無

固定残業代とは基本給もしくは各種手当の中に、あらかじめ一定時間の残業代(たとえば1か月あたり20時間まで)を含ませておく制度です。こうすることで一定時間までなら残業時間の集計や残業代の計算などにかかる手間が軽減されます。

残業代が賃金の中に最初から含まれているので、上の例なら法定労働時間を超えて残業しても上限の20時間以内なら残業代は出ません。もちろん法定労働時間だけ働いたとしても固定残業代分が賃金から減額されることは原則ありません。

この制度では毎月の残業代があらかじめ賃金に上乗せされているので、一見すると月額賃金が数万円分高くなり、求人サイトを見た求職者にとっては「同業他社に比べて高い給与がもらえる」と誤解を招きやすいのも事実です。

ブラック企業はここをうまく利用します。10年以上前ですが、某大手居酒屋チェーンに新卒入社した社員が過労死し、遺族が会社を提訴して会社に責任と損害賠償を認めさせた事件があったことを記憶している人もいると思います。

この会社の求人サイトでは大卒初任給が19万4500円で提示されていましたが、実際はなんと80時間分の残業代が役割給として7万1300円(時間単価は891円となり当時の最低賃金ライン)含まれており、それを含めない初任給は12万円程度となっていました。

月の残業が80時間以内だと役割給が減額される仕組みになっており、月80時間以上の残業をこなさないと初任給が満額もらえないように設定されていました。

月80時間の残業と言えばもはや「過労死」水準です。この時裁判所は、過労死した社員の死亡前の労働時間は1か月あたり平均276時間で、時間外労働は平均112時間と認定しました。

こうしたブラック企業による「求人詐欺」を防止するため2018年に職業安定法が改正され、現在では会社が固定残業代の制度を採っている場合は求人サイト等で必ず明示するよう義務付けられました。違反すれば行政指導および懲役・罰金・求人サイト等への求人広告の掲載禁止・会社名公表等の罰則があります。(2018年2月19日の記事「改正職業安定法が施行されました」参照)

しかし固定残業代をめぐるトラブルは今でも発生しており注意が必要です。したがって入社を希望する会社の求人サイトに固定残業代について何も記載がない場合でも、入社前の会社説明会などで「固定残業代制採用の有無」を必ず会社に確認すべきです。もし説明が曖昧ならその会社への入社は避けるべきだと思います。

会社の求人サイトに固定残業代制についてまったく記載されていないのに、もし入社後に基本給や手当の中に毎月の残業代が含まれていると説明してきたら改正職業安定法違反となり完全にアウトです。すぐに労働基準監督署か近隣のユニオンに相談してください。違法行為なので会社が罰則を受ける可能性もあります。

また求人サイトに「固定残業代あり」と記載されている場合も注意が必要です。改正職業安定法では、基本給や手当の中に残業代を含む場合には「固定残業代制あり 月20時間 3万円」といったように固定残業代に含まれる労働時間数およびその金額を明示するように規定しています

したがって単に「固定残業代あり」とだけ記載され、そこに含まれる残業時間の上限は月何時間なのか。その金額はいくらなのか記載がない場合は法律違反となるのでブラック企業の可能性が高いです。

もう1つの注意点として、「固定残業代あり」と記載されているなら、固定残業代の上限時間を超えて働いた場合やそうでなかった場合の条件についても当然書かれているはずです。

条件についての記載がない場合でも、上限時間を超えた部分の残業代はきちんと支払われるのか、上限時間を超えない場合でも賃金は減額されないのかを入社前に必ず確認してください。

残業代は労働基準法上支払われるのが当然だし、固定残業代の趣旨を考えれば上限時間を超えていなくても減額されないのは当然です。もし会社の説明が曖昧ならその会社への入社は避けるべきです。

また固定残業代の時間単価が、その地域の最低賃金に抵触していないかどうかも重要です。たとえば固定残業代が月20時間・3万円なら、30000(円) ÷ 20(時間)で時間単価1500円なのでOKですが、これが500円とかだったら違法になります。

もう一つ言うと、労働基準法では、残業代つまり時間外手当は25%割増された金額の支払いが規定されているので、実際には固定残業代の時間単価はその地域の最低賃金の25%割増で設定されていることが多いです。最低賃金をベースに設定しているところに姑息さを感じますが‥。

したがって固定残業代の時間単価に25%の割増が付加されているかどうかもしっかり確認しましょう。もし時間単価に25%の割増分が含まれていなければ違法になります。固定残業代の時間単価に25%割増が含まれていなければ、この会社への入社は避けるべきだと思います。

 

3.試用期間の有無・期間の長さと期間中の労働条件

2018年に施行された改正職業安定法では、試用期間中の労働条件についても明示するよう規定されています。試用期間がある場合、その期間は入社後いつまでか。また試用期間中の雇用身分や労働条件についても記載が必要となります。

入社を希望する会社の求人サイトで、試用期間について何も記載がない場合は「試用期間なし ⇒ 入社後即本採用」と解釈することもできますが、入社前の会社説明会などで必ず会社に確認すべきです。

最近では試用期間のない会社も増えているようですが、特に新卒社員の場合、試用期間がまったくないのは少し疑問に思います。もし会社の説明が曖昧ならその会社への入社は避けるべきだと思います。

求人サイトに試用期間についての記載がなく、会社説明会でもまったく説明されなかったのに入社後「試用期間は1年。待遇は契約社員」などと書かれた文書が配布され記名・捺印を求められたような場合は改正職業安定法違反となり完全にアウトです。すぐに労働基準監督署か近隣のユニオンに相談してください。違法行為なので会社が罰則を受ける可能性もあります。

また求人サイトに「試用期間あり」とだけ記載されている場合も注意が必要です。改正職業安定法では「試用期間あり 期間は6か月 期間中の待遇は正社員に準ずる」といったように試用期間の長さ、期間中の労働条件(待遇)についても明示が義務付けられています

したがって試用期間の長さや試用期間中の労働条件(待遇や雇用身分)について記載されていない場合は改正職業安定法に違反していることになります。このような会社への入社は避けるべきです。

余談ですが、経営者には、正社員の解雇は難しいが試用期間中なら労働者の解雇は簡単にできると思っている人が多いですが、これは経営者の理解不足で、たとえ試用期間中であっても労働者の解雇や本採用を拒否するには高度に客観的かつ合理的な理由がなければできません。(2018年10月14日の記事「入社した学習塾で本採用を拒否された場合の対応」参照)

 

以上、ブラック企業に入社しないために会社の求人・採用情報のどこに注意すべきかを3回にわたって説明してきました。これから就活を始める大学生の皆さんや現在就職活動中の求職者の皆さんはこれらの項目や注意点をよく頭に入れて、ブラック企業の「求人詐欺」に引っかかることのないよう、入社する会社選びは慎重に行なってください。

またeisuワオを含む学習塾への就職を希望する方で、就職活動の際に、会社の説明や対応が「おかしいな」と思ったらすぐに私たちまでご相談下さい。力になりますよ。