偽装業務委託契約に気をつけろ!
全国の学習塾で働く塾人の皆さんへ。かなり遅くなりましたが新年明けましておめでとうございます。
コロナ禍はまったく衰えず、感染者が全国で急増し2度目の緊急事態宣言が出されるまでになりました。今年も学習塾業界にとっては苦難が続きそうで、私たちのような学習塾で働く労働者にとっても大変な年になりそうです。
これから本格的な人員削減や賃金等の引下げを行う学習塾が出てくることも予想できます。当労組も何かあればいつでも闘争できるよう準備を怠りなく進めていこうと思っています。
さて、去年の9月頃より全国の学習塾に勤務する塾人から、会社から業務委託契約を結ぶように言われて困っているという相談を受けるようになりました。相談者は定年後の再雇用社員・契約社員・非常勤講師の方が中心ですが、正社員の方もいます。
会社が、雇用する労働者に業務委託契約を結ぶように言ってくるのは、労働者を「フリーランス化」するということです。言い換えれば会社が労働者を雇用し業務を行なわせるのではなく、個人事業主として業務を委託する(請け負わせる)ということです。
近年、働き方改革における多様な働き方の一つとして、会社に雇用されずにフリーランスで個人が独立して仕事を請け負う働き方が注目されるようになってきました。政府もこれからの時代に合った多様な働き方の一つとしてフリーランスの拡大を後押ししています。
ウーバーイーツのように、インターネット上のプラットフォームを仲介して単発の仕事(ギグワーク)を請け負うギグワーカーと呼ばれる人もコロナ禍で増加していますが、これもフリーランスの一形態と言えます。
大手企業の経営者や経団連などの経営者団体も、今後「正社員のフリーランス化」を進めていく考えを表明しています。去年、大手広告代理店の「電通」が40歳以上60歳未満の社員2800人を対象に早期退職を条件に、退職後に会社と業務委託契約を結ぶという新制度が発表され、230名ほどが応募したことがニュースになっていましたね。
リストラ手段としてのフリーランス化
コロナ禍により大手企業でも業績の下方修正や赤字決算が増加し、社員の早期退職を方針として打ち出す会社も多くなっています。この流れはこれから加速していくと思います。もちろん学習塾業界もこの流れとは無縁ではありません。
問題なのは、会社が合法的に労働者をリストラしたり人件費を削減するために、労働者に業務委託契約を結ばせ、有無を言わさずフリーランス化を進めている事例が昨年末より急増していることです。
どうやら会社側につくブラック社労士・弁護士・経営コンサルタントなどが経営者に人件費を合法的に減らす方法としてアドバイスしているようです。先述した「電通」の場合も、本当の目的は社員のリストラではないのか?という議論がすでに噴出しています。
会社にとっては労働者を直接雇用して働かせるより、フリーランスにして業務委託契約を結んで働かせたほうが人件費を減らせるし、労働者のために会社が負担する経費もカットできます。また労働者の「首切り」も簡単にできます。その理由は後述しますが・・・。
最初に言っておきますが、会社に言われるまま業務委託契約書にサインすることは絶対にしてはいけません! 取り返しのつかないことになります!
業務委託契約締結で労働者ではなくなる!
業務委託契約書にサインするとどうなるのか?業務委託契約を結ぶ場合、いったん自己都合退職扱いとなり会社との雇用関係が消滅します。その後同じ会社と「個人事業主」として新しく業務委託契約を結ぶことになります。つまり会社と業務委託契約を結ぶと「会社に雇用される労働者」ではなくなり「個人事業主」になります。
この「会社に雇用される労働者」と「個人事業主」との違いをしっかり区別しておかないと大変なことになります。会社に雇用される労働者から個人事業主に変わると、次のようなことが起こります。
1.労働法に保護されなくなる。
個人事業主は労働者ではないので労働基準法、労働契約法など労働諸法規の対象外となり、その保護を受けられなくなります。労働基準監督署に訴えても、もはや労働者ではないので解決は困難です。
2.社会保険はすべて自己負担となる。
労働者ではなくなるので、社員なら会社が半額負担している厚生年金や健康保険などもすべて自己負担(国民年金・国民健康保険)になります。また仕事中にケガをしても労働者ではないので労災保険による補償は受けられず、すべて自己負担となります。かりに後遺症が残っても自己責任で片づけられてしまいます。
3.雇用保険がないので失業しても失業手当はもらえない
業務委託契約を一方的に打切られた場合(個人事業主は労働者ではないので、解雇という表現はありません)、労働者なら一定の条件を満たせば雇用保険から失業手当がもらえますが個人事業主は労働者ではないのでそのような制度はなく、失業状態になっても失業手当はもらえません。
4.労働者としての権利がなくなる
労働者ではないので時間外手当(残業代)、有給休暇や介護休暇、育児休暇などの各種休暇、通勤費支給などの労働者としての権利も失います。
5.一方的に報酬額を減額されても対処は難しい
個人事業主の場合、その報酬額は業務を委託する会社との交渉で決まります。しかし力関係から一方的に報酬額を切下げられることもあります。拒否することも可能ですが、それは業務委託契約の解消 ⇒ 仕事を失うことを意味します。
もともとその会社に社員として雇用されていた場合は、低い報酬でも受け入れざるを得ない立場に立たされます。また報酬に未払い等があっても個人で対応するしかなく、この点でも不利な状況に立たされます。
6.一方的に契約を打切られることもあるが対処は難しい
業務委託契約は会社に雇用される正社員のように「期間の定めのない契約」ではなく、期限・条件付きのものとなります。したがって常に不安定な立場に置かれ、会社の都合で一方的に打切られることがあります。もしそうなったとしても個人事業主の立場ではどうすることもできません。別の会社かクライアントを探して仕事を受注するしかありません。
7.労働基準監督署や労働局に相談しても動いてくれない
よくわからずに会社に言われるまま業務委託契約書にサインしてしまい、後で「しまった」と思って労働基準監督署や労働局に相談しても、「あなたは個人事業主で労働者ではないので対応できない」と言われて追い返される事例もすでに報告されています。
労働基準監督署や労働局は、あくまで企業と雇用される労働者に、労働諸法規を遵守させるためにある役所なので、そもそも労働基準法等の保護の対象外である個人事業主のために動く義務はありません。
弁護士やユニオン(一般労働組合)が付き添っていれば別ですが、個人で相談しても門前払いされる可能性もあります。あくまで相談する労基署や労働局の担当者次第ですが、解決は難しいと思います。
このように労働者から個人事業主になると、弱い立場で一方的に不利な条件で会社の都合のいいように働かされることになります。しかも抵抗することは困難です。
一方、会社にとっては人件費を減らすことができ、また労働者を直接雇用することによって生じる社会保険料などの諸経費も減らせます。会社の都合で首切りも簡単にできるので、非常にうまみがあります。
業務委託契約とは
業務委託契約とは、会社が業務の一部を外部の企業や個人に委託するときに行なう請負契約で、技術者、ライター、デザイナー、弁護士、公認会計士、コンサルタントなどの専門的技能を持つ個人事業主を想定した契約となります。大手プロダクションを辞めて独立した芸能人などにも当てはまると思います。
このように業務委託契約はあくまで特殊技能・技術や才能を持つ人がそれを生かして仕事をすることを想定した契約です。一般のホワイトカラー・事務職を想定したものではありません。
細かいことですが、法律上は「業務委託契約」という用語は存在せず、民法上は「請負契約」・「委任・準委任契約」の2種類に区分されます。そのため「業務委託契約」と言っても「請負契約」か「委任・準委任契約」のどちらになるのかで契約の質が変わってきます。
それでは業務委託契約と一般の雇用契約はどこが違うのでしょうか?
普通、会社に雇われて働く労働者(正社員・契約社員・パート・アルバイトなど)は会社と雇用契約を結びます。そして会社の指揮命令の下で、決められた時間分の労働力を会社に提供し、その対価として月給なり時給なりの賃金が発生します。派遣社員もこれは同じで、派遣社員は派遣元の派遣会社と雇用契約を結んでいます。
でも会社と業務委託契約を結んだ当事者は、労働者ではないので会社と「雇用関係」はありません。対等の立場で業務を遂行し、会社(契約先)に対して自らの労働力ではなく仕事の成果を提供することになります。
具体的に言うと、たとえば納期までに完成品を作って納品するとか、契約期間中に特定の業務を遂行することで報酬(給与・賃金という用語ではないことに注意)が発生します。
ここで注意すべきなのが、業務委託契約の場合はあくまで仕事の成果をもって報酬が発生するので、仕事の成果を提供するためにどこで何時間働いたか(勤務場所・労働時間)は問われません。会社との雇用関係もないので業務の進め方についても会社の管理や指揮命令等は受けません。また同時に複数の会社やクライアントと契約を結ぶこともできます。
たとえば技術者の場合、3か月後の〇月〇日が納品日なら、その日までに完成品を納品すればよく、そのための労働時間や勤務場所、業務の進め方などについては自分が決め、会社からの細かな指示や命令は受けないということです。
こうなっていたら偽業務委託(偽装請負)契約
業務委託における「個人事業主」の働き方の特徴から考えると、もし会社に騙されて業務委託契約を結んでしまったとしても・・・
①会社から勤務場所や勤務時間(出退勤の時間)が決められている。
②勤務時間中は会社からの指示・命令を受けており、業務の進め方について自己裁量権がまったくない。
③労働時間や職務内容が以前とまったく変わらない。他の直接雇用の社員と同じである。
④働く立場が直接雇用される労働者から個人事業主に変わることについて、会社からほとんど説明を受けていない。
⑤個人事業主になると労働条件が以前とどのように変わるのか。デメリットを含めて、会社からほとんど説明を受けていない。
⑥業務委託契約書を見ると、その内容が普通の雇用契約とほとんど変わらないか、まったく同じである。
⑦専任義務があり他の会社と業務契約を結ぶことができない。もしくはかなり制限されている。
上の項目のどれかが当てはまったら「偽装業務委託(偽装請負)」の可能性が高いです。これらの項目をよく覚えておいて下さい。
ユニオン(一般労働組合)なら解決可能
会社に言われるまま良くわからず業務委託契約にサインしてしまい、個人事業主にされ、不本意に労働条件が大きく引下げられてしまい「会社に騙された。何とかしてほしい」と思っている方へ。
直後なら解決は可能です。ただしこの場合、個人事業主として働いた期間が長くなればなるほど立場が不利になります。したがってすぐに近隣のユニオンに相談・加入されることをお勧めします。
個人事業主は労働者ではないので、そもそもユニオンに加入できるのか?といった意見もありますが、ユニオンは解雇されて失業中の方も加入しています。また実際ユニオンは「偽装請負」に関する労使紛争の解決事例はかなり豊富です。
こういう意見もあります。もし会社に騙されて業務委託契約を結んで個人事業主にされた人がユニオンに加入して、ユニオンがその会社に団体交渉を申入れしたとしても、会社はその人が「雇用される労働者」ではないので団体交渉等を拒否してくるのではないか?という意見です。
確かにこれは当然あると思いますが、実は「突破口」と「戦術」は存在します。このサイトは経営者や経営者側のブラック士業の方も閲覧しているようなので詳しいことは書けませんが・・・ 困っているなら早急に近隣のユニオンまで相談してください。
業務委託契約にサインする前に相談を!
私はeisuに入社する前、大学を卒業してから10年以上、大手予備校講師や個人請負の家庭教師、個人塾の経営などいわゆる「個人事業主」のフリーランスとして教育業界で仕事をしていました。
その時の経験から言えることは、フリーランスで仕事ができ、安定した収入を確保できる人と言うのは、一定の専門知識・技能を持っているのはもちろんですが、「時流」「運」、ある程度の「知名度」「仕事上のコネ」がないと継続していくのは難しいです。
個人の努力も当然必要ですが、それだけでは限界があると思います。私がフリーランスをしていたのはちょうど第2次ベビーブーム世代が高校入試や大学受験を迎えた頃で、生徒数が右肩上がりに増えていった時代でした。
仕事はいくらでもあったし結構稼げたのでフリーランスの働き方は自分には合っていたと思っていますが、歳をとった時に果たしてこの働き方をずっと続けられるのか?と不安に思い、ある人の紹介でeisuに入社した経緯があります。
最近「フリーランスで働くことのメリット」を強調する広告サイトが多くなり、「これからはフリーランスでの働き方が時代の主流だ!」などと主張する記事が増えましたが、現実はそんなに甘くはありません。
もちろんフリーランスで働くメリットやデメリットもよくわかっていますが、たとえば新卒で就職して以来ずっとサラリーマンでやってきた人に、何の準備もなくいきなり明日からフリーランスで仕事をしろと言うのは無理だと思います。
学習塾の講師職なら大手の衛星予備校で看板講師になれるか、独立して自分の学習塾を立ち上げ、多くの生徒を集められるような人なら可能ですが、そうでない「普通の」人がフリーランスとして仕事を継続していくことは難しいのではないでしょうか。
したがって会社が「普通の」社員に対してフリーランスの契約を強要してくる目的はリストラ以外には考えられません。もし会社がフリーランスで契約しないかと言って来たら、自分はリストラ対象者だと思ったほうがいいです。
自分の立場や労働条件がどう変わるのか、内容もよくわからないのに会社と安易に業務委託契約を結ぶことは絶対にやめましょう。契約書にサインする前に私たちか近隣のユニオンまで必ず相談して下さい。
すでに業務委託契約にサインしてしまった場合はできるだけ速やかに、私たちか近隣のユニオンまで相談を!
ユニオンがシルバー人材センターに対して介入できないなんてことがあるとは思えません。
無論ユニオンに加盟されていることが前提だと思いますが、コミュニティユニオンとしての性格からも、それは当然シルバー人材センターとの意見交換にユニオンが介入できると思います。
シルバー人材センターに登録して、就労先でパワハラを受けました。コミュニティユニオン東京三多摩協議会に相談したら、シルバー人材センターは特殊な就労形態だと言われました。
そもそも、署名押印していません。センターから、連絡表が送られただけです。
ユニオンでは、当初交渉に同行してくれると言っていました。
その後 雇用契約ではないので、同行できないと言われました。
結局、私はシルバー人材センターを退会してしました。
コミュニティユニオン東京三多摩協議会では、労働者の権利が守られる契約のもとで仕事を見つけるようにアドバイス受けました。
会計年度任用職員の職を応募中です。
ユニオンは、委託契約 特にシルバー人材センターは介入できないのですか?