学習塾ウィザスの労使紛争
eisu社員、それから全国の学習塾で働く塾人の皆さんへ。
もうコロナワクチンの接種はお済みでしょうか。先日、ワクチン接種完了者が日本の全人口の半数を超えたことが発表されていました。最近は全国の新規感染者も減少しています。
ワクチン接種がこのまま進めば、国内での行動制限を緩和するといった意見も聞かれるようになりました。
でもまだ安心はできません。昨年以来、コロナ感染者が減り緊急事態宣言が解除されても、しばらくすると再び感染者が急増し緊急事態宣言が出されるということが何度も繰り返されてきました。
これから年末にかけて変異株に感染する人が増え、コロナの第6派が猛威を振るう懸念もあります。
ブレイクスルー感染の例も報告されており、ワクチン接種が済んだからといって、今までのような「普通の」生活に戻ることはリスクが高いと思います。
私たち塾人も、ワクチン接種が完了しても気を緩めず、コロナ禍の収束宣言が出されるまでは「三密」を避け、「感染しない・感染させない」ことをモットーに慎重に行動すべきだと思います。
三重県を含む東海地区でもコロナの新規感染者が減っていることから、eisuでも10月以降、全社員が集まる拡大会議や高校部の全体会議・集団研修が実施されるかもしれません。
今のところ、そうした対面式の大規模な集団会議や研修を実施するという通達は社から出ていませんが、当労組は今までの社の方針から十分あり得ると思います。
コロナの新規感染者が減っているとしても、やはり今の時期、安易に大規模な集団会議等を行うべきではないと当労組は考えます。
eisu社員の方は、何かあれば当労組まで情報提供・相談して下さい。当労組も来月以降になると忙しくなるかもしれません。
ウィザスの変形労働時間導入をめぐる紛争
さて、最近ウィザスの労働組合の方とリモートで話をする機会が多くなりました。9月6日のブログにも書きましたが、当労組はウィザス支部(大阪教育合同労働組合所属)と提携関係を持っています。
ウィザス労組には、共闘するワオコーポレーション分会(なにわユニオン所属)と協力しながら、定期的にリモートでの情報や意見交換、アドバイス等を行なっています。
2014年の結成以来、ウィザス労組は、三六協定(残業協定)の締結をめぐり会社と何度か紛争しています。以前は三六協定そのものが未締結のままで残業が行われていたようで、それをウィザス労組が是正・改善させてきました。
しかし今年に入り1年単位の変形労働時間制を会社が強引に導入しようとしたことが発端となり、ウィザス労組が今年2月の団体交渉において、変形労働時間制を導入する場合は事前に通知するよう回答要求するもこれを無視しました。
さらに今年3月、ウィザス労組のA組合員が従業員代表として、三六協定を締結するため協議を求めてきたにも関わらず、会社はまったく応じないどころか、突然A組合員を人事異動させ、しかも三六協定の未締結を理由に時間外調整手当をカットし、「異動に応じれば時間外調整手当を元に戻す」という不当な嫌がらせをしてきました。
A組合員への人事異動や賃金カットに対する団交申入れは「人事異動は団体交渉になじまない」「時間外調整手当のカットはやむを得ず行なったもの」として団交を拒否しました。
A組合員への人事異動や手当のカットは「組合員の労働条件の重大な変更」になるので、団体交渉の義務的交渉事項としては成立します。労働組合法上まったく問題ないです。
6月、ウィザス労組は1年単位の変形労働時間制導入の詳しい説明を求めて団体交渉を申入れましたが、会社は団交にはまったく応じず、文書による回答だけに終始してきました。
今年3月以降、ウィザス労組は何度も会社に団体交渉を申入れていますが、会社はすべて拒否しています。なぜこれほど頑なに団交を拒むのか理解できません。
経営側としては労働組合との団体交渉は、本音ではやりたくないのはわかりますが・・
そして1年単位の変形労働時間に関する労使協定を夏期講習が始まる直前の7月に締結しました。年変形労働時間制導入に関する社員への説明はたったの5分程度だったようです。
この1年単位の変形労働時間制の導入における問題点として、ウィザス労組から直接聞いた説明によると・・
1.1年単位の変形労働時間がいつから開始されるのか、年間総労働時間や特定期間等の詳しい説明が社員にまったく行われてないこと。
2.1年単位の変形労働時間に関する労使協定の内容が、社員にまったく周知されていないこと。
上記問題について、ウィザス労組は回答要求書を会社に出していますが、会社は無視しているようです。経緯の詳細はウィザス労組のブログに記載されているので「大阪教育合同労働組合 ウィザス支部 アメブロ」で検索してみて下さい。
ところで、ウィザスの新年度はeisuと同じく3月だそうです。1年単位の変形労働時間制は年度開始に合わせて導入するのが一般的で、年度途中に導入する理由がわかりません。
仮に開始時期が8月なら、翌年7月末までの1年間の変形労働時間制となりますが、年度とズレた年変形労働時間など聞いたことがありません。来年3月からスタートする新年度はどうするのでしょうか?
1年単位の変形労働時間制の導入・運用には、いくつかの厳しい条件をクリアする必要があります。曖昧な形で運用すれば、結局ツケを払わされるのは現場で働く労働者です。
実はeisuでも以前、会社の年変形労働時間制の運用が発端となり1年以上にわたる労使紛争になった事例があります。そのときの経験を踏まえ、1年単位の変形労働時間制に関する記事を、近日書こうと思います。
ウィザス労組は大阪府労働委員会に申立て
このような会社の暴挙に対し、ウィザス労組は9月、大阪府労働委員会に、不当労働行為の救済申立てを行ないました。内容は以下の2つです。
1.会社が3月以降の団体交渉申入れに応じず、拒否していること。
2.会社はカットしたA組合員の時間外調整手当を支払うこと。
両方とも、労働組合法第7条の不当労働行為(正当な理由なく団体交渉を拒否すること・労働組合員への不利益取り扱い)に該当します。
労働委員会への救済申し立ては、言わば行政裁判の一種に相当します。したがって、この事件は「令和3年(不)第40号 ウィザス事件」と呼称されることになったようです。
詳細は「大阪教育合同労働組合 ウィザス支部 アメブロ」で検索してみて下さい。
ちなみに労働委員会での審議は、「審問」(証人尋問)の段階は原則公開されるので、労働委員会に申し込めば一般の人が傍聴することも可能です。
関西在住で学習塾の労働問題に興味のある方は傍聴に行くのもいいかと思います。三重県からは無理ですが、大阪に住んでいたらぜひ傍聴したいです。
労使紛争が「社外」に拡大するとき
本来、会社は団体交渉に誠実に対応する義務があります。私たちeisuユニオンも会社(経営者)と過去何度も団体交渉していますが、団交を拒否されたことは一度もありません。
労働組合から団体交渉を申入れされた場合、普通の会社ならまずは組合と団体交渉による労使交渉で誠意を持って話し合い、解決を図るのがスジです。
ところが、労働者の権利を代弁する労働組合が気に入らないブラック経営者も多いのも事実です。したがって労組の団交申入れを拒否する会社も当然あります。
また労働組合への報復として、組合員だけに賃金カット等の不利益を与えることもあります。こうした報復行為はeisuでも過去にありました(でも和解金とって解決しました)
もし会社がこのような報復行為に出た場合、当然労働組合もそれに応じた対応、すなわち会社への「実力行使」に出ることがあります。
労働組合法では会社への「実力行使」の例としてストライキや抗議行動、街宣活動などが正当な行為として認められています。
また労働委員会への提訴や、マスコミへの発表、サイトを通した情報発信などもできます。
会社が労働組合に報復し、労働組合が会社に実力行使する。双方がこうした行為に出れば、労使紛争は次第にヒートアップし拡大していきます。
私はユニオンみえの組合員として、今までいろいろな会社の労使紛争を見てきました。その経験から言えることですが、結局、会社が労働組合との話し合いを理由なく拒否(無視)し続けたり、社内の組合員に弾圧を加えれば、労使紛争がヒートアップし必ず「社外」に拡大します。
この段階に入ると以前のような労使の話し合いでの解決に戻すことは困難です。そうなると最終的に大きなダメージを食らうのは会社のほうです。
こう考えると、特に学習塾のように生徒・保護者を顧客とする教育サービス業にとっては、労働組合への会社の対応としては賢明なやり方とは到底言えないでしょう。
今回、ウィザスの労使紛争は、ウィザス労組により大阪府労働委員会に不当労働行為として提訴されました。したがってこれは会社の中で労使の話し合いで円満解決を図るレベルを超え、労使紛争が「社外」に出てしまったことになります。
私たちeisuユニオンは、ワオコーポレーション分会と共に、同じ学習塾の労働組合として、ウィザス労組が勝利するまで応援・支援していきます。
ウィザス労組の皆さん。闘争の勝利目指して粘り強く頑張って下さい!