年次有給休暇の取得義務違反問題(第2回)

eisu社員の皆さん。全国の学習塾で働く塾人の皆さんへ。

前回のブログで、現在eisuで発生している年休5日取得義務違反の問題について書きましたが、その続きです。長くなったので3回シリーズにしました

年休5日取得義務違反問題の発覚

2019年4月から労働基準法が改定され、経営者はその雇用する労働者で、年休を10日以上付与される者に対し、雇用主である経営者の責任において年休を5日取得させないと労働基準法違反となり罰せられることになりました。

この問題は、1月14日の全体会議で経営者がeisu社員の年休取得日数に言及し、社員の自由な年休取得を妨害するような趣旨の発言をしたことにより発覚しました。

前回のブログに記載しましたが、2月9日の団体交渉で社が提示した1月末時点の年休取得日数の部署別平均では、年休取得が「0日」「0.5日未満」という部署もあり、この問題の深刻さが浮き彫りになりました。

当労組は社に要求書を出し、年休を10日以上付与される社員で現在の取得日数が5日未満の社員に対し、3月中に年休を5日以上取得させるよう強く要求しました。詳細は前回のブログ『年次有給休暇5日の取得義務違反の問題(第1回)』をご覧下さい。

社は当労組の要求に従い、3月1日「年5日の有給休暇の取得期限は今月3月末迄です」という通達を全社員に配信しました。その中で、特に取得日数が低い部署を優先に、各部署長に対し社員すべてが3月末迄に5日以上年休を消化するよう指示が行われました。

取得が5日未満の社員には年休取得計画を出させ、その計画通りに3月末迄に取得することになります。すべてのeisu社員が3月の年度末までに、年休を5日以上消化すれば会社が労働基準法違反に問われることはなくなります。

首都圏と愛知静岡の統括への回答要求

さて、当労組は2月25日、年休の取得日数が極端に低い首都圏と愛知静岡地区を管轄する統括リーダーに対し回答要求を行いました。以下に質問内容と各統括リーダーから届いた回答を記載します。

回答には学習塾が共通して抱える職場問題が明示されています。サイトを閲覧している塾人の皆さんは、これを読んでどのように思いますか? 

①現在施行されている年次有給休暇5日の取得義務の詳細を知っているのか? 知っているならいつ知ったのか?

②首都圏と愛知静岡地区で勤務する社員の年休取得日数が極端に低い理由について、問題点も含めて詳細かつ具体的に説明されたい。

③法律違反回避のため、首都圏と愛知静岡地区で勤務する社員で、年休消化が現在5日未満の者について、3月中に5日以上になるよう年休を取らせる必要がある。その計画を具体的に説明されたい。

【質問①の回答】

(愛知静岡統括リーダー)  

年休5日の取得義務については、その施行当初から社内通達でもたびたび発信されており、認識していました。                           

(首都圏統括リーダー) 

年休5日の取得義務は承知しております。施行当初から認識していたかと思います。社内メールでも情報共有をいただいておりました。

【質問②の回答】

(愛知静岡統括リーダー) 

地区内5校舎ともに小中部と高校部を併設し、1校舎あたり社員1~2名、校舎によっては実質社員1名で運営し非常勤スタッフの助けを借りています。

社員数が少ない環境下で有給休暇を取得しようとすれば非常勤スタッフにその日の運営全般を託すことになるため、責任感の強い社員は積極的に有休取得できないのが現状です。

今改めて考えると、生徒が活発に来校する時間(18:00~)を避けた「前半休」を活用して運営することはできたと思います。

そのような柔軟な提案を社員に行うことで「有休取得」環境の構築に積極的に取り組むべきでした。社員の責任感に甘えることにより生じた今回の問題は、地区リーダーの管理不足としか言いようがありません。

(首都圏統括リーダー) 

数値が極端に低い理由としては、私の計画性の欠如を除けば、首都圏では職員数が少なく、有休を取るには非常勤スタッフを長時間確保する必要があるため。また仕事熱心な職員が多いためと考えております。

高校部であれば、職員は1校舎につき1名です。休みを取る場合、同じ校舎の小中部職員+非常勤スタッフにその日の校舎運営を任せることになります。しかし小中部職員は授業に入ってしまうため、高校部では実質ほぼ非常勤スタッフのみでの校舎運営となります。

もちろん、非常勤スタッフのみでも運営に支障が出ないように研修はしっかり行っているつもりではあるのですが、首都圏地区の職員は生徒ファーストと言いますか非常に責任感の強い職員が多いこともあり、有休の積極的取得に至っていないのが現状です。

 【質問③の回答】

(愛知静岡統括リーダー) 

当面3月については前述した通り有休計画を個別にヒアリングしそれを実行に移します。その都度、計画予定に基づき、本社宛てに届書を提出します。

22年度につきましては、22年4月~23年3月の休日カレンダーに基づき、有休予定日(年5日以上)を個別に追加し計画的な有休取得に備えます。

さらには、非常勤スタッフに運営全般を任せられるよう研修を充実させ戦力化することで、社員の年5日以上の有休が確保できる環境を目指します。 

 (首都圏統括リーダー) 

首都圏校舎では有休の積極的取得に至っていない現状がありますが、ルール違反を犯すわけにはいきませんので即刻改善するつもりでおります。

2月以降、東京地区小中部とも相談を重ねており、3月末までに全職員が最低5日以上の有休を取れるよう、すでに計画済みです。追って、本社宛に届書を提出する予定でおります。

統括リーダーの回答からわかる学習塾特有の問題

愛知静岡地区および首都圏の統括リーダーの回答文を読むと、eisuのこれらの地区で働く社員が年休を取れない理由がよく表れています。これはeisuだけではなく、多くの学習塾で起こっている問題です。

その問題とは・・次の2つです。

①「必要最少限、ギリギリの人数での校舎運営」

②「社員の真面目さや仕事への熱意、責任感に依存した職場運営」

①について、回答文から、愛知静岡や首都圏の校舎では各校舎に配属される正社員は1~2名程度で、あとはアルバイトの非常勤スタッフだけで運営されていることがわかります。これはいわゆる「ワンオペ校舎」での労働実態が如実に表れています。

各校舎の正社員スタッフが1名程度なら年休など自由に取れるはずがありません。誰かが休めば校舎運営に穴が開きますからね。アルバイトに任せるにしても校舎運営の責任上すべて任せるのは難しいでしょう。

愛知静岡や首都圏の校舎は「映像授業」「個別指導」が主体で、社員がすべて「担当授業」を持っているわけではないですが、校舎へ配属される社員数が1~2名では人員に余裕がないことは明らかで、これがこの地区の社員の年休取得率が極端に低い要因です。

②は、学習塾業界には昔からある話で、いわゆる「やりがいの搾取」に当たります。どんなに職場の労働環境が悪くても、教育はやりがいのある仕事なので、常に生徒第一に考えて文句を言わずに働くべきだと信じ込ませることで、過酷な労働に従事させることです。

こうした「やりがいの搾取」から発生する労働問題は、どこの学習塾の職場にもあります。

質問②の回答文に「責任感の強い社員は積極的に有休取得できない」「生徒ファーストと言いますか非常に責任感の強い職員が多い」「社員の責任感に甘える」という文言があることからも、これらの部署での「やりがいの搾取」の存在がわかります。

でも現在、「やりがいの搾取」に甘んじ、職場環境を改善する努力を怠り、労働者の熱意や責任感に依存した職場運営が多くの人から理解されるのかは疑問ですね。むしろブラックな職場だと認知する人のほうが多いのではないでしょうか。

社は法律の改定後、頻繁に年休5日の取得を促す通達を出していました。質問①の回答からも愛知静岡や首都圏の統括リーダーが年休5日の取得義務を知っていたのは明らかです。しかし彼らは自分の管轄する部署で5日分の年休を取らせる措置をまったく取っていません。

これは彼らがやりがい搾取の職場に完全に依存し、自分たちの職場の労働環境を変えていくことを怠っていたからだと考えられます。統括管理者としてあまりにも無責任です。

また「やりがいの搾取」は、そこで働く人の権利や職場改善の要求を抑圧する方向にも作用します。つまり、生徒のためを思うのならグダグダ文句を言わずに働け!ということです。

こうした「やりがいの搾取」の論理が蔓延する職場では、年休を取ろうとしても「年休取得  = 生徒のことを考えていない」との思い込みや職場の同調圧力から、取得を言い出せないことも十分あります。

私もかつては中学生、高校生、浪人生、大学生、社会人まで教えていたので、「生徒第一」「生徒ファースト」を否定するつもりはまったくありません。

でも最近、学習塾の職場の多くで「やりがいの搾取」が蔓延し過ぎて、そこで働く塾人が疲弊していく実態は目に余ります。「生徒第一」「生徒ファースト」のためなら国の決めた法律や制度に違反してもいいのでしょうか?

さて、学習塾業界で働く塾人が年休を取りにくいという問題を解決するのは実は簡単です。1校舎に配属される正社員数を増やせばいいだけです。

ワンオペ校舎なら常時2~3名に増やせば人員に余裕ができ、年休取得も可能になるはずです。しかし人件費が上がるので、現状では多くの学習塾にとって実行は困難です。

しかし何の対策も取らずにこれを放置していれば、結局・・学習塾の社員は年休をほとんど取れない  ⇒  離職が増える・新入社員が集まらない ⇒  ますます人員に余裕がなくなる ⇒ ワンオペ校舎が増える・業務負担が過大になる ⇒  職場の労働環境がますます悪化するという負のスパイラルに陥っていきます。

愛知静岡や首都圏の校舎ではこういった事態がこれから起こってくる(もうすでに起こっている)かもしれません。

次の第3回は、次年度(22年度)において、すべてのeisu社員に取得義務のある年休5日をどのように取得させるのかについて、当労組の社への要求に基づき説明します。

あわせて学習塾年休が取りにくい原因について、もう少し掘り下げてみたいと思います。

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