年次有給休暇の取得義務違反問題(第3回)

eisu社員の皆さん。全国の学習塾で働く塾人の皆さんへ。

eisuで発生した年休5日取得義務違反問題の続きです。今回でこのテーマはいったん終了します。

3月1日以降、eisuでは取得が5日未満の人に対し部署別に取得計画を出させ、計画的に取得させることが進められています。

当労組は先週、年休取得が極端に低い愛知静岡と首都圏の統括リーダーに対し、3月末までの年休取得計画表を提出するよう要求しました。今日届いた取得計画表を見ると、主に「半休」制度を使って消化しており、全員が5日以上取得できるようになっていました。

3月末までにすべてのeisu社員が最低5日の年休が取得できる見込みです。これにより会社が年休5日取得義務違反(労働基準法違反)に問われることはなくなったと思われます。

年休5日取得義務違反問題の背景

2019年4月から労働基準法が改定され、経営者はその雇用する労働者で、年休を10日以上付与される者に対し、年休を5日取得させないと労働基準法違反となり罰せられることになりました。

このテーマでブログをアップしてから、他塾で働く塾人や全国のユニオン関係者の方からさまざまな質問がありました。だいたい内容は以下の通りです。

『年休5日取得義務について、eisuは何の取り組みもしてこなかったようだが、会社は法律が変わったことを全社員に周知させ取得を促進することはしなかったのか?』『eisuの幹部社員は制度が変わったことを知っていたのか?』『経営者が法改正を知らず、対策を講じていないのはありえない話で、eisuのガバナンスは一体どうなっているのか?』といったものです。

実はこの間も本社労務担当から社員に年休を最低5日取得するよう繰り返し通達が出ていました。当労組も社には法改正について何度も伝えていました。3月5日のブログに掲載した愛知静岡、首都圏の統括リーダーの回答からも、彼らが法改正をその当初から知っていたことがわかると思います。

それならなぜ、取得義務のある年休5日をほとんど消化できていない部署があったのか? また部署の責任者はなぜ部下に対して年休の取得を促進しなかったのか?

誤解のないように言うと、現在、eisuで働く社員のすべてが、年休をほとんど取ることができないということはまったくありません。実際は、普通に年休を取れる部署はあるし、取っている社員もいる一方で、年休をほとんど取れない部署や、取っていない社員もいることです。

つまりeisu社内でも働く部署や職場によっては年休を取りやすい所とそうでない所にはっきり分かれることです。これは2月16日のブログに掲載した部署別平均取得日数からもわかると思います。

では「年休を取れない部署や職場」にはどんな問題があるのでしょうか?  これにはワンオペ労働や「やりがい搾取」の問題等もありますが、本質的にはその部署や職場での「社員間のコミニュケーション不全」にあると思います。

eisuのように各地で校舎展開している大手学習塾の場合、それぞれのエリアや部署、校舎で職場の「風土」や「文化」が異なる場合があります。たとえばある校舎に初めて配属された人は、最初にその部署や校舎の「職場文化」「職場風土」に合わせる必要に迫られます。

配属された職場が社員間の相互コミニュケーションがしっかりできている所ならいいのですが、それがうまくいっていない場合だと「職場の雰囲気が自分に合わない」と判断して年度途中の退職につながるケースもあります。

当労組にはeisu社員からいろいろな意見が届きますが、年休取得を例にとっても、社員間で双方向のコミニュケーションや連携がきちんと行われている部署や職場では取りやすいようです。一般的にスタッフが多い大規模校舎のほうが年休を取りやすいのは事実ですが、小規模校舎であっても計画的に交代で休んだりしているところもあります。

つまり社員同士が「相互に自由に話し合える関係」「相互に協力し合える関係」にある職場では、年休取得を申請しにくい雰囲気にはならないし、嫌みや説教を受けることもない。周りの社員との協力関係ができているので気兼ねなく休める。結果として誰もがバランスよく年休を取れることになります。

ところで、ブラックな職場を見分けるポイントの一つに「職場内で管理職を含む社員同士のコミニュケーションや連携が十分できているか」というものがあります。「言いたいことが言えない」「周囲の同調圧力が強く一方的に従わされる」「異論を言うと嫌がらせされる」「皆自分の事しか考えないのでまったく連携が取れない」ようなギスギスした雰囲気の職場では、当然年休の取得など言い出せるはずもなく取得率はゼロに近くなります。

こうしたコミニュケーション不在、協力関係不在の風土や文化を持つ職場では年休の取得率が異様に低くなるのは事実で、年休取得率があまりにも低い職場は総じて「ブラック」な環境にあると言えます。

要するに年休取得日数そのものが、その部署や職場内の雰囲気や人間関係、職場環境、働きやすさなどを判断するバロメーターとなるのです。就活生で年休の取得率や平均取得日数を気にする人が多いのも、実はこうしたことをよく知っているからです。

22年度以降の年休5日の確実な取得について

当労組が社と協議し、要求を社に認めさせた結果、22年度以降の取得義務のある年休5日分については以下のようになりました。これは3月1日の全社員通達に記載されています。ポイントは以下の2点です。

①22年度以降は、会社が全社員一律に特定の日を年休5日に指定する一斉付与方式ではなく、年次有給休暇付与計画表を利用する個人別付与方式の採用を検討しています

②方法は、本年4月以降の早い時期に個人別有給取得計画表を各部署上長に提出します。その予定に従って年休取得を進めていくことになります。個人の意思をできるだけ尊重した最低限の年5日の年休取得が実現すると考えています。

当労組からの注意ですが、これは付与された年休の全部ではなく、法律上の年休取得義務のある5日分についての処置です。5日を超える部分については、もちろん各自の自由意思により取得できます

この方法は簡単にいうと社員個人別の計画年休になります。他の大手学習塾でも導入している会社もあります。「検討中」とありますが、社からは「この通りにいく」と伝えられており100%実施されると思います。

これで来年度以降は年休取得日数が「0日」や「0.5日」の極端に低い部署はなくなり、すべてのeisu社員が年休を最低5日は確実に消化できるようになります。

さて、当労組は4月以降、社との労使協議(団体交渉)を予定しています。団交では21年度、すべてのeisu社員が取得義務のある5日以上の年休を取得したかどうか、資料を開示させ確認します。おそらく5日未満の人はいないと思いますが「念のため」に行います。

同時に本年度の年休取得がきわめて低い愛知静岡と首都圏の統括リーダーから直接説明を聞くことを予定しています。結果はこのサイトで公開します。

当労組は現在、22年度において取得義務のある5日を含めた、eisu社員の年休取得促進のための議論を社と本格的に進めています。詳細は近日このサイトで公開します。

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