今年、学習塾に入社された皆さんへ

eisu社員、それから全国の学習塾で働く塾人の皆さんへ。
久しぶりの更新になります。4月以降、新年度の業務の関係で急に多忙となり、なかなか更新ができませんでした。この間、公式サイトはもとより公式Twitterも更新していません(少し更新をサボっていたのも原因の一つですが・・)
当労組からの発信が途絶えていたので、eisu社員の中には労働組合がなくなったのではと不安に思った人もいたようですが、安心して下さい。eisuユニオンはこれからも今まで通り活動を継続していきます。
労働組合のある学習塾はほとんど皆無
さて、この4月にeisuを含めた学習塾に入社した新人の皆さん。新しい職場での業務には慣れたでしょうか? 入社して2か月も経過すると、そろそろ実際の労働条件や職場環境がはっきりとわかってくる頃だと思います。中には入社前に聞いていた内容とまったく違うと思っている人もいるのではないでしょうか。
職場の労働環境を良くするには労働組合が必要ですが、学習塾には労使対抗型の労働組合がある会社はほとんど存在しません。労使対抗型というのは、会社の御用組合ではなく、そこで働く労働者の側に立ち、労働者側の視点で職場の労働環境を良くするために活動している労働組合のことを指します。
労使対抗型の労働組合が職場内で活動している学習塾はeisu以外には関西の大手塾ワオ・コーポレーションとウィザスがあります。私たちeisuユニオンは労働組合「ワオ・コーポレーション分会」「ウィザスユニオン」と協力・共闘関係を結んでいます。
労使対抗型の労働組合がしっかり根ざして活動している職場はブラックにはなりません。もし会社(経営者)がそこで働く労働者の権利を軽視し労働条件を改悪しようとすれば敢然と立ち向い、闘争も辞さないからです。
でもほとんどの学習塾には労働者側に立つ労働組合がなく、表面化していないかもしれませんが職場内でさまざまな労働問題が発生していることもまぎれもない事実です。それでは学習塾の職場にはどのような労働問題が存在するのでしょうか?
学習塾の職場で発生する労働問題
以下は学習塾の職場で発生している代表的な労働問題です。これらは全国の学習塾で働く塾人からの相談等に基づいていますが、学習塾だけではなくどんな業界・業種でも起こり得る内容も含みます。
① ワンオペ校舎でのワンオペ労働
個別指導や映像授業の教室では、正社員1名しか配属しないワンオペ校舎が増えています。こうした校舎では正社員が授業、生徒や保護者対応、対外イベント、クレーム対応、営業、広告宣伝等校舎業務全てを1人でやらねばならず、長時間労働や数十日に及ぶ連続勤務の問題が発生しています。
② 1年単位の変形労働時間の問題
1年単位の変形労働時間制の導入には会社と労働者代表が労使協定を締結する必要がありますが、労働者代表が適正に選出されず、締結された労使協定の内容も労働者に開示されないケースがあります。こうした会社ではサービス残業や長時間労働の問題が発生しています。
③ 年休取得に関する問題
学習塾では昔から有給休暇(年休)が取れない・取りにくいという問題が存在します。ワンオペのような余裕のない人員配置や、社員の年休取得を「悪」と考える経営者がいまだに多いことが背景にあります。eisuでも今年2月に年休5日取得義務(労働基準法)違反の問題が表面化しましたが、当労組が解決しました。
④ やりがい搾取の問題
学習塾では昔から「生徒第一」「自分よりも生徒のために」という労働哲学が存在します。この理念を悪用し労働者のやりがいや責任感を利用して過酷なブラック労働に従事させる経営者や会社もあります。
⑤ ワンマン経営の問題
学習塾は大手塾も含めて創業者が一代で大きくした会社がほとんどで、創業者やその一族によるワンマン経営が長年続いているところが多いです。したがって社員への説明もほとんどないまま突然、労働時間や公休日、賃金体系が改悪されたり、気に入らない社員への退職強要や労働条件引下げ等が行われるケースもあります。
⑥ 職場でのパワハラ・セクハラ問題
経営者や役員、上長から退職強要や労働条件引下げにともなうパワハラを受けているという相談がここ数年増えています。また学習塾で働く人は20代の若い女性の割合が高く、女性社員からのセクハラ相談も件数は少ないですが入っています。
⑦ 「事なかれ管理職」の問題
労働環境の改善がいっこうに進まない職場では、管理職の「事なかれ主義」が原因になっているケースが多いです。こうした職場では何か問題が起こって管理職に要望、相談しても無視・放置されます。そして会社を見限った人が退職していくことも起こっています。「事なかれ管理職」の特徴と弊害は別の機会に詳しく説明します。
⑧ 契約更新時の雇用条件引下げ問題
学習塾はアルバイトや契約社員で働く人の割合が高い業種ですが、雇用契約の更新時に次年度の労働条件が改悪され、拒否すると契約更新されないという相談はかなり多いです。
また採用後に個人事業主としての待遇を強要されたという相談もあります。eisuでも過去に、定年後に再雇用となった社員が労働条件を改悪され、当労組が介入して解決したケースが複数あります。
新入社員の皆さんが今すぐやるべきこと
学習塾には労使対抗型の労働組合がある会社はほとんどなく、経営者によるワンマン経営が行われているところも多いです。4月から学習塾に入社し塾人となった皆さんは、ブラック労働から自分の身を守るためにも次のことを実践して下さい。
① 労働法・労働法制の知識を増やす
近年、労働者を騙そうとする企業の手口は年々巧妙になってきており、自分の働く会社の職場環境や労働条件のどの部分が、法律に照らしてどのようにおかしいのかを理解していないと、違法状態のまま会社に都合よく働かされることになります。
これを防ぐには労働基準法や労働契約法等を勉強して、できるだけ多くの法律知識を身に付けることが大切です。可能ならば過去の労働裁判の争点や判例、判決の判断基準なども知っているとブラック企業に確実に対抗できます。まさに「知は力なり」です。
このサイトの外部リンクページにある『労働基準法違反を許すな!労働者』は労働法規をカテゴリーやケース別にわかりやすく解説してあるのでぜひお役立て下さい。
② 実際の始業時間・終業時間を毎日記録する
学習塾の中には午前中の早出や終業時間後の業務が常時あるにもかかわらず定時の労働時間でタイムカードを打刻させる会社もあります。そもそもタイムカードや勤務時間記録表等がなく社員の労働時間をまったく管理していない会社もあります。
サービス残業や長時間労働を防ぐには、自分で毎日の勤務時間をしっかり記録し証拠として残す習慣を身につけるべきです。タイムカード等があっても当てにならない場合もあるので、出勤時や退勤時に会社のPCから自分のスマホに空メールを送信すれば実際の出退勤の時間が記録されます。
また会社からの業務通達メールや配布物等もできるだけ保存しておきましょう。これ以外では経営者や幹部の会議での発言内容もできるだけ記録しておくとよいです。客観的な証拠があれば、私たちに相談する際の資料になるし、自分の身に何か問題が起こった時に有利に闘えます。
③ 社外にネットワークを持つ
就職して数か月経過すると自分の交際範囲は同じ会社の人だけという人は実際多いですが、こうした状況は絶対に避けるべきです。ブラック企業のやり口の一つに「隔離して洗脳する」というのがあります。会社に従属させるには、労働者を外部との人間関係から切り離し孤立させた上で洗脳するほうが効果的なのです。
こうならないためにも、自分とは異なる業界・別の会社に就職した先輩や友人、知人などとの関係を持続させることはとても大切です。定期的に会って情報交換すれば自分が働く会社の職場環境や働き方を客観的に判断することができるし、具体的なアドバイス等を聞くこともできます。社外に人的ネットワークを持っていればそれが強みになります。
④ 会社の就業規則をしっかり読む
会社が社員の労働条件を変更したり、懲戒したりする場合、根拠になるのが就業規則です。私たちは複数の学習塾の就業規則を入手していますが、その中には労働基準法に違反する規定も実際あります。
そこで職場で労働問題が起こった時や、自身に労働トラブルが降りかかった時に会社に対抗するためにも自分の会社の就業規則を知っていることが大切です。特に労働時間制、公休日、有給休暇、時間外賃金、賃金規定、服務規程、懲戒規定の内容は最低限知っておくとよいです。
⑤ 納得できないなら私たちに相談を!
4月に学習塾に入社し塾人となった皆さんへ。普段の勤務の中で「おかしいな」「納得できないな」と思うことがあったら、すぐに私たちに相談下さい。仕方なく受け入れてしまうと、自分が働く職場の労働環境はますます悪くなります。
例年この時期にはeisuの新入社員や、他の学習塾に入社した新人の方からの相談も入ります。相談の際には状況を客観的に説明できる資料があれば、より早く的確にアドバイスできます。
なお関西地域の学習塾で働く方はワオ・コーポレーション分会、ウィザスユニオンでも労働相談を受付けているので、検索して調べてみて下さい。
1人で悩まないで、ぜひ私たちに相談して下さい。