スクールTOMASの解雇理由は『❓❓❓』が一杯
昨年の10月頃、eisu ユニオンのサイトを通して、関西のスクールTOMASの学校法人向け個別指導教室で勤務していた社会人講師のM氏からアクセスがありました。
M氏はある理由によりスクールTOMASで担当授業(コマ)を外され昨年8月に事実上解雇となり「管理職ユニオン・関西」に加入し職場復帰を求めて会社と闘争しています。
スクールTOMASは個別指導教室の運営で全国的に有名な企業であり、親会社は東証プライムに上場するリソー教育です。
学校法人向けの個別指導教室とは、少し聞きなれない言葉ですが、スクールTOMASでは全国の私立中高一貫の進学校の中に個別指導教室を提供・運営しており、そこにスクールTOMASの社員やアルバイト講師を派遣して自習室の管理や生徒への個別指導、進学指導などをおこなっています。
要するに「学校の中に塾の教室がある」ということで、これはスクールTOMASのWebサイトにも会社の事業として掲載されています。
その教室でアルバイトの英語講師として勤務していたM氏からの相談だったのですが、解雇理由を聞いたところ「22年1月、スクールTOMAS関西本部に自分が英訳した絵本を1冊封書で献呈したことが解雇理由」と答えました。
それを聞いた私はすぐに頭の中が「❓❓❓」となってしまいました!
こんな理由で解雇になるのか・・・??
英訳本を献呈したら解雇の謎
その後、M氏とメールやオンラインでやり取りしていろいろことがわかりました。彼が言うには、会社側の解雇理由として、自分が英訳した絵本を本部に献呈した際、郵送したので、本が入った封筒の裏側に自分の名前と勤務校(教室のある学校名)を記載していたそうですが、その中で自分が勤務する教室が入っている学校名を書いたことが就業規則上の重大な違反だと説明されたそうです。
それを聞いた私の頭の中は再び「❓❓❓」でいっぱいになりました。
いくら就業規則に規定(この時点で会社の就業規則の細かな内容をM氏は知らない)があったとしても、M氏が勤務する教室のある学校名を記載した封筒に翻訳本を入れて不特定多数に大量に郵送したわけではないし、たった1冊本部に善意で献呈しただけです。学校名を見た人も本部の社員数名だけでしょう。こんなのは普通問題にもなりません。解雇理由として明らかにおかしいです。
実は、M氏はこの一件ですぐに解雇されたわけではありません。2度と同様なことはやるなと本部から来た課長に罵声を浴びせられて注意された後、決定的な出来事が22年7月に起こるまでは勤務を続けていました。
でもこの一件の後、職場のTOMAS社員から無視されたり、上長に挨拶しても返事されないなどの陰湿な「職場いじめ」が横行するようになったそうです。
全国のユニオン関係者および学習塾で働く塾人の皆さんは、絵本を1冊献呈したことが解雇理由とされたことついて、どう思いますか?
生徒を書面で注意したらパワハラになる謎
22年7月、M氏は自習室で勉強せずにスマホいじりをやめない生徒を「書面で」注意しました。講師が自習室内の生徒を注意するときには書面で行う規定があったからです。
生徒に真面目に勉強するように注意したM氏ですが、その直後、教務主任に呼び出され「あなたの行為は生徒へのパワハラに相当する」と激しく叱責されました。
後日、1月の本部への絵本献呈で激怒した課長が教室に来て、教務主任と同じ発言を踏襲して『二度あることは三度ある。今後すべての授業からあなたを外す。そして研修を受けてもらう! 拒否してもシフトを外したままで自主退職せざるをえないように追い込むからあきらめた方がいい。自分から願い出て依願退職しろ!」と退職を強要してきたのです。
この「決定的な出来事」についても頭の中が「❓❓❓」でいっぱいになります。
塾で教えていれば、勉強しない生徒や教室内で騒ぐ生徒を注意することなどいくらでもあります。暴言や暴力を振るったらパワハラですが、不真面目な生徒を書面で注意しただけのことが、どうして生徒へのパワハラ行為になるのか? こんな理由で会社の命令で研修を受ける必要性はあるのか?
知り合いの労働弁護団の弁護士に聞いてみたところ、『本を1冊献呈して解雇になったことも含めて、M氏の行為がパワハラになるわけない。こんな理由で解雇なんてできない。裁判になれば100%勝てる』と笑いがら答えてました。
全国のユニオン関係者および学習塾で働く塾人の皆さんは、M氏の行為は生徒へのパワハラだと思いますか? M氏への会社の対応をどう思いますか?
M氏のユニオン加入と会社への団体交渉・提訴
M氏は22年8月以降、スクールTOMASで担当していたすべての授業から外されました。アルバイト講師なので担当する授業がなければ「コマ給」つまり賃金は支払われないので、事実上の解雇となっています。
M氏は22年8月、「管理職ユニオン・関西」に加入し、スクールTOMASに団体交渉を申入れました。団交に出席した会社側の教務局次長は、M氏を担当授業から外した理由つまり解雇した理由について、7 月の生徒へのパワハラ(?)行為ではなく、教務主任も課長も生徒へのパワハラだと決めつけた発言をしていなかったと主張して、解雇理由は1月に翻訳した絵本をTOMASの関西本部に献呈したことだと主張しました。
M氏の勤務校舎のある学校法人とスクールTOMASとの間には、学校法人の校舎の中にTOMASの教室があることを外部に一切口外してはならないとの秘密保持契約があり、M氏がTOMASの関西本部に絵本を1冊郵送した際、その絵本の添え状に勤務先の学校名が記載されていたことが重大な秘密保持契約違反であり、解雇に相当するとの説明でした。
私もこれまでユニオンみえの組合員としていろんな会社の解雇事例を見てきましたが「絵本を1冊封書で会社の本部に献呈したことが、会社の秘密保持契約に違反するので解雇」なんて話は今回初めて聞きました。あまりにも「後から取ってつけたような理由」だし、M氏の行為により相手の学校法人に重大な損害を与えたわけではありません。
こんな理由でアルバイト講師とはいえ、いくら何でも解雇なんてできませんよ。これを会社側が解雇理由として主張するなら笑い話ですねww こんな主張がまかり通るスクールTOMASの職場は相当ブラックなのかもしれませんね。単なるアルバイト講師の解雇問題だけでは済まなさそうです。
23年1月、M氏はスクールTOMASに対して職場復帰と会社側の謝罪、社内にパワハラ相談窓口を設置すること(M氏も上長のパワハラを受けている)を求めて会社を提訴しました。裁判は今も続いています。原告のM氏がかなり有利な状況になっていますが、公判中なので公開できない情報もたくさんあります。
M氏の闘争方法について思うこと
M氏は「管理職ユニオン・関西」による会社への団体交渉、裁判闘争、抗議行動と並行して、自分のサイトやYouTubeチャンネル、Xなどで、三浦十右衛門の名前でスクールTOMASの解雇問題についての詳細を赤裸々に全国に発信しています。関西のユニオン関係者ならご存知の方も多いと思います。
下にM氏の公式サイトへのQRコードを掲示したので興味のある方はご覧下さい。サイトからYouTubeに飛べます。YouTubeでは今回のM氏の解雇問題に関するものが80本以上(!)あります。映像はなく音声だけのラジオ形式ですが、全部は無理としても最近のものだけでもご視聴下さい。
ところで、M氏のこうした闘争のやり方は、これからの時代に労働組合が採るべき新しい闘争方法として当労働組合も大いに注目しています。
ブラック企業と効果的かつ有利に闘うためには、公式サイト、YouTubeや、X、インスタグラム等のSNSを駆使しながら「そこで、今、どんな問題が起こっているのか。どういう状況なのか」を情報として全国に発信し、他の職場で働く人との情報共有や意見交換しながら働く人どうしのネットワークの拡大につなげていくことが必要です。
私たち eisu ユニオンと、ウィザスユニオンはともに、労組の公式サイト、公式Xを保有しています。今年9月には民間・公教育を問わず全国の教育産業で働く人のネットワークの母体となる全国教育労働者支援ネットワークのサイトを開設しました。
一人ひとりの労働者は弱い存在だとしても、ブラック企業と闘争し勝利するためには、情報の発信チャンネルを複数持ち、全国の労働者と「つながる」ことが強みになると考えます。そうした意味ではM氏の方法は理にかなっていると思います。
私たちも来年には公式YouTubeチャンネルを開設し、全国への情報発信力をより高めていきたいと思っています。そして eisu ユニオンは同じ学習塾業界で活動する労働組合として、M氏のスクールTOMASとの闘争を支援していきます。
全国のスクールTOMASの教室で働く社員および講師の皆さんへ。
職場の労働環境で悩んでいる方は、サイト内の「お問合せ」ページより、私たちにご相談ください。力になりますよ。