『いなば食品』の騒動から考えたこと

全国の学習塾で働く塾人の皆さんへ。

4月半ばに、週刊文春に、大手食品メーカー『いなば食品』で、新卒入社予定の一般職社員19名のうち17名が入社を辞退したという記事が出ていました。いなば食品といえば猫用のおやつ「CIAOちゅーる」で猫好きには有名な会社です。「ちゅ~る ♪  ちゅ~る ♪  CIAOちゅ~る ♬」のCMもTVでよく流れていますね。

私は複数の猫と一緒に暮らしており「CIAOちゅ~る」を毎日1本づつ与えています。またフードも一部いなば食品の製品を愛用してます。なので、記事を見た労働組合の人間として、いなば食品の労働環境がどうなっているのか、すごく気になりました。

この記事が出たあと、元社員や現役社員から、いなば食品の内部情報が次々と外部にリークされ、とんでもないブラック企業だったことが明らかになりました。

友人の娘さんで、保護猫活動をしている方が、3年前に『いなば食品』を志望してエントリーしたのですが、結局入社できず落ち込んでいました。今思うと入社しなくて良かったです。

『いなば食品』の問題点

いなば食品に入社予定の一般職社員が大量に入社を辞退した直接のきっかけは・・

①会社のサイトに掲載される社員寮とは異なる、廃屋同然の社員寮で共同生活を強制されたこと。

②入社直前に、求人サイトに記載された額から3万円減額された賃金が会社から提示されたこと。

③総合職で募集していたのに、入社直前に一般職での採用と工場勤務を命じられたこと。

④入社予定者に「労働条件通知書」を入社前に交付しなかったこと。

などです。ちなみに入社を辞退した一般職は全員女性だったそうです。

文春の記事の後、これ以外にも、いなば食品を退職した元社員や現社員から、社内の異常な職場環境が次々と外部にリークされるようになりました。それらはざっと見て次のような内容ですが、去年の「ビッグモーター」と同じくらいの超絶ブラックな職場環境です。

1.創業家の社長とその妻(会長)が独裁的権力を握り、好き勝手に振る舞っている。逆らえば解雇か工場に左遷され、社員は「使用人」か「召使い」のような状況に置かれている。

2.会長・社長の自宅の管理を無給で社員にさせている。庭や自宅内の清掃、買い物、子供やペットの世話など、あらゆる家事を休日・平日・早朝を問わず社員を呼び出して行わせている。

3.会長はイケメン社員を自分の「付き人」のように扱う。会長の機嫌を損ねると高級財布をプレゼントさせられる。イケメン社員の履歴書の写真を使い「イケメントランプ」を作成している。

4.社長が500ページを超える社員の行動規範をまとめたルール本を作成。内容はかなり細かく、毎日朝礼で社員に唱和させる。

5.このルール本では、茶髪は解雇。36歳以上の長髪は禁止。実際に茶髪で解雇された女性社員の事例では、その写真が全社員にメール配信されていた。

6.有給休暇は給与をもらって休める特別ボーナス休日であり、理由不明の有給休暇は欠勤とみなし取得を認めない。休む理由を周囲に正々堂々と言えない休暇は欠勤と同じ。

7.退職する場合は同業や競合他社への転職は禁止。退職予定者は転職先企業名を会社に申告しなければならない。違反すれば退職証明を出さない。また年収に相当する罰金が課せられる。

8.転職先を会社に秘匿あるいは偽って移った場合、書状を転職先企業に送付し、その会社に対して訴訟を提起する。

9.転職した後で、会社に何らかの損失・損害が発生した場合には、その「補填」を全額請求する。

10.転職・退職後に、転職サイトやSNS等にいなば食品を批判する口コミを書いた者には、訴訟を提起する。

上記事例ですが、労働者が会社を訴えた場合(会社から訴えられた場合も含む)は、裁判では「4」以外は労働者が勝訴できると思います。「4」も、その内容が逐一労働者に強要され、違反すると解雇や賃下げ、不当配転などの事実があれば勝訴できます。

なぜならこれらの事例は世間の一般常識、コンプライアンス、労働諸法規やその他の法律に照らして極めて異常だからです。従業員が数名の家族経営の会社ではこうした事例を見ますが、従業員4千名、海外にも支社がある大企業での事例は聞いたことがありません。

いなば食品は、従業員を創業者一族の「使用人」「召使い」と考えているようですね。こうした異常な労働環境が今まで外部に出なかったのは、退職者や現役社員による外部への情報流出を会社が厳しく統制してきたことが要因でしょう。

上記事例の「7~10」などは、退職、転職する社員への脅し文句ですね。社員を恐怖で支配している様子がよくわかります。相当数の社員が会社の方針に不満や反感を持っていたことがうかがえます。それが週刊文春の記事がきっかけとなり一気に表に出たのだと思います。

ブラック企業の特徴として、①非上場 ②同族経営 ③職場の独裁支配 の3つがありますが、ここはすべて満たしていますね。この点もビッグモーターと共通します。また、いなば食品には労働組合はないようですが、もし労組があれば、ここまでひどい職場環境にはならなかったと思います。

求人サイトの ” 闇 “

いなば食品への入社を辞退した女性へのインタビューでは、求人サイトの「総合職」募集の掲示を見て応募したのに入社直前に「一般職」で入社してもらうと言われ、給与はどうなるのか?と聞いたところ「わからない」と言われたそうです。

最終的には総合職の給与から3万円ダウンにた賃金が提示され、さらに一般職は工場勤務になる。廃屋同然の社員寮で共同生活するようにと告げられ、不信感が一気に高まったと答えていました。

これはつまり「総合職」で応募者を釣っておいて、実際入社すると総合職とは別の、条件の悪い待遇で採用するという「釣り広告」だと思います。こうした「釣り広告」同然の求人情報も、リクナビ、マイナビの中には多数存在しており、年々その「騙しの手口」は巧妙化しています。

求人サイトの情報に騙されないよう、求人詐欺に引っかからないため、企業の口コミやネガティブ情報をしっかり調べて会社を選ぶ就活生も増えていますが、いなば食品のように会社の外部への情報統制が厳しく敷かれている場合は対処できません。

求人サイトの企業情報にはその会社のネガティブな内容は絶対に掲載されないので、本当のところは入社してみないとわからないということです。「会社ガチャ」「配属ガチャ」「上司ガチャ」などと言われますが、これでは「雇用のミスマッチ」は無くなりません。

当労組のサイトでは、全国の学習塾で働く人から労働相談を受けていますが、入社して数か月以内の新卒社員からの相談のほとんどが「求人情報と入社後の待遇がまったく違う」という内容です。

最近「退職代行サービス」を使い、入社したばかりの社員が退職するケースが急増しているとのニュースをよく聞きます。それを 最近の若者は我慢が足らない と批判する人もいますが、そのうち何割かは求人サイトの詐欺広告に騙されて入社した人達かもしれません。

今回、いなば食品での騒動では、社内のネガティブ情報が次々と表面化しました。発端は新卒社員の入社辞退ですが、あまりにもブラックな社内事情が暴露されたことで、いなば食品の企業ブランドやイメージが著しく悪化したのは事実です。

これは新卒社員と企業との「雇用のミスマッチ」の問題にはとどまらないと思います。今回暴露された情報は半永久的にネットに残ります。いなば食品は「入社してはいけないブラック企業」として広く認知されたはずです。

現在、25年度入社の社員募集と採用活動が行われていますが、いなば食品の職場の労働環境が現状のまま何も変わらないとしたら、一体誰が応募するのでしょうか?これから現社員の大量退職も予想できますが、もし 退職数  > 入社数 となった場合には、将来的に事業が継続できるかも未知数です。

今回の騒動について、いなば食品は現在沈黙していますが、早急に公式会見を開くべきです。そして創業者一族の排除(トップの交代)、外部からの新社長の招へい、コンプライアンスの順守、社名変更、労組結成による職場の民主化など。社内組織や体制を根本的に立て直す必要があると思います。

CIAOちゅ~るはもう買いません

いなば食品の工場の壁には『世界の猫を喜ばす』と書かれています。自社で働く労働者を不幸にしておいて、何を言っているのか!と憤りを感じますが、今回の件では大規模な商品不買運動は起こっていません。

なぜならこれはあくまで社内の問題で、いなば食品が製造販売する商品に大きな欠陥があったわけではないからです。「ちゅ~る」を別の類似品に換えても、猫さんが気に入って食べてくれるかもわからないです。

なので、つい先日までうちの猫さん達に与えている「ちゅ~る」を別メーカーの類似品に変えようとは思いませんでした。

でも、少し前のことですが、①社長は昔から猫が嫌い。②自宅で飼っている猫を汚いケージに閉じ込めるなど、飼育環境が劣悪。世話も社員に丸投げ。③一部の猫は家の外で飼育されており、ケガや伝染病等にかかっていても放置。④猫の飼育状況の改善を意見したペットシッターを解雇。⑤飼い猫を自社商品の検証用(モニター)として扱う。 

などの情報が写真やメール文などの証拠付きで、SNS や You Tube に出ていました。

それらを見て『ここの社長や会長は猫を金儲けの道具として見ていたのか。本当は猫が好きではないのか』と考えるようになりました。今まで「ちゅ~る」を製造するいなば食品(いなばペットフード)は好きな会社でしたが、飼い猫へのネグレクトや虐待ともとれる情報を見て、考えが大きく変わりました。

「ちゅ~る」は無添加のおやつではありません。うちには高齢の猫さんもいるので、この機会に添加物の入っていない類似品に段階的に変えていこうと思います。うちの「お猫様達」が気に入って食べてくれることを願ってます。

 

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