休日・休暇は何日あれば理想的か?

eisu社員、それから全国の学習塾で働く塾人の皆さんへ。
近年、会社を選ぶ際、年間の休日・休暇数が何日あるのかを重視する人が多いです。ワークライフ・バランスの取れる企業を選ぶ人が増えているのは良いことです。「休日が少なく有休も取れない」業界と揶揄される塾業界でも働く人のワークライフ・バランスに配慮する職場が増えてほしいですね。
年間休日・休暇の目安は何日か?
さて現在、週休2日が原則となっているので、年間の休日・休暇数が104日あるのかどうかが一つの目安となります。1年52週 ✖ 2日 = 104日 となります。自分が働く職場の年間休日数が多いのか少ないのかは、この104日という日数を基準に考えるとよいです。
ただしGW、お盆、年末年始などの時期に5日~1週間程度のまとまった休みがあるのか。有給休暇(年休)がきちんと取れるのかという条件も重要です。
年間104日というのはあくまで目安で、これを満たしていても、長期休暇がなく有休も取れないならワークライフ・バランスの面では自宅と職場を往復するだけとなり、プライベートの生活を充実させることは困難です。
したがって「104日 + α 」で考え、年間休日が110日以上、有休が年10日程度(日本の労働者平均)取れる、長期休暇が年数回ある。というのが理想でしょうか。あくまで理想ですが・・・
問題なのは、リクナビ、マイナビ等の求人情報に掲載されている休日・休暇日数と、入社後の本当の休日数がまったく異なることが多いことで、これは「求人詐欺」ですが、本当の労働条件を求人情報に載せると求職者が集まらないので、自社に都合のいい条件を記載する企業もまだ多いです。
最近当労組に届いた、関西の大手塾「浜学園」に勤務する人からの相談事例に基づいて説明します。
浜学園社員からの相談
7月初めに、関西の有名進学塾「浜学園」で勤務する社員からメールがあり、年間休日が80日程しかなく有休も取れない。休日数も求人サイトの募集要項の記載と実際とはまったく異なる。という相談がありました。
浜学園は関西の私立中学入試に特化した伝統のある塾として有名で、関西以外の地域にも教室を出しています。塾人なら誰もが名前を知っている大手塾です。
有休を除いた年間休日は、大手塾では106日程度のところが多く、少ないところでも96日前後でしょうか。それにしても浜学園のような歴史のある大手塾で年間休日が80日程度しかないとはにわかに信じられません。
eisuでも昔は週休1日の時代があり、年度途中で会社が社員の公休日をバッサリ減らしてきたことがありましたが、これがきっかけで当労組と会社で労使紛争になり、当労組が勝利して今では週休2日が原則となり有休を除く年間公休日数は106~107日程度となっています。
浜学園の休日数
現在「働き方改革」が進み、企業が雇用する社員に年休を5日取得させないと罰せられることが労働基準法に規定され、労使ともにワークライフ・バランスを重視する意識が高まっているのに、年間休日が80日程度の大手塾があるのか?
少し信じられない内容だったので、相談者に会社の「休日・休暇規定」を送ってほしいと伝えたところ、すぐに2024年度の「休日・休暇規定」が送られてきました。
その内訳を見ると1.定休日が年間52日 2.会社指定祝日が年間16日 3.夏期休暇が年間1日 4.年末年始休暇が年間1日 5.リフレッシュ休暇が年間5日 6.アニバーサリー休暇が年間1日 7.指定有給休暇が年間5日(年休の5日取得義務分)
これらを全部足すと年間休日数(有休を除く)は81日となります。相談者の話に嘘はありません。
内容を詳しく見ると、1年は52週あるので週1日は定休日ということです。会社指定祝日とは「会社が指定する祝日」ということになっていて、一般的な「国民の祝日」とは異なる日程が指定されています。また夏期と年末年始の休暇が各1日しかないのは辛いです。
週休2日が当然の令和の時代においては、GW、お盆、年末年始にまとまった休暇が取れないと会社と自宅を往復するだけの生活になります。これで有休が自由に取れないならかなり過酷な労働条件です。
当労組では全国の大手~中小学習塾の年間休日数を把握していますが、指定有休を含めても年間81日という休日数はかなり少ないです。この条件では社員を募集しても応募する人がいるのか? 入社した人材が定着するのか? 疑問に思います。
でも残念なことに、この少ない休日数でも労働基準法違反にはなりません。労基法では「労働者に少なくとも週1回休日を付与すること(第35条)」が規定されているので、週1日休日があれば法律違反にはなりません。
つまり極端に言えば法律上は年間休日が52日でも即違法とは言えないのです。(注意)ただし労働基準法第32条との関係で残業代などの支払い義務等はある。
労働基準法上の休日規定をもっと詳しく知りたい方は、当サイトの過去記事『連続勤務は何日までか?』をお読み下さい。
浜学園の隔週休暇のカラクリ
浜学園の年間休日が81日しかないのは働く人のワークライフ・バランスへの配慮の関係上、かなり問題があると言えます。ところが浜学園の採用情報をリクナビで確認したところ、年間休日は100日と記載されています。
81日とは書いてないし、他の大手塾と比べても少な目ではありますが、少なすぎるということはありません。この点を相談者に指摘したところ、あるカラクリが浮かび上がりました。
実は浜学園の休日数に関して、もう一つ問題点があります。浜学園の休日規定では隔週休暇というものがありリクナビにも記載されています。隔週休暇は毎月2日分を任意で取得できるもので、定休日と合わせて第1週~4週まで1・2・1・2のように、月に6日休むことができます。
会社の休日規定にも年間24日(毎月2日 ✖ 12カ月)と記載されており、先述した81日に24日を足すと105日となり、この休日数なら他の大手塾と比べても遜色ありません。
ところが浜学園の休日規定を見ると隔週休暇は「無給」(!)なので、隔週休暇を取得した場合は、休んだ日の労働時間を他の勤務日に振り分けて追加する。つまり別の出勤日に休んだ時間分だけ余分に働くことが条件となっています!
たとえば1か月に2日、隔週休暇を取得した場合は、1日の労働時間7時間 × 2日分 = 14時間をどこか別の出勤日に追加して働くこと(サービス残業する)が必要になります。
そうしないと「無給」なので隔週休暇を取った2日分の賃金が給与から減額されます。これ詐欺ではないのか? こんなのは休暇とは言えないです!
浜学園では1か月単位の変形労働時間制が採用されており、毎月の実働時間は平均170時間と記載されてますが、相談者によると職場では「ノーワーク・ノーペイ」の原則が厳しく適用されていて、毎月170時間勤務することが給与を満額もらえる絶対条件なのだそうです。
1か月単位の変形労働時間制はホテルや旅館などの宿泊サービス業や介護業界で採用される労働時間制で、従業員との労使協定(サブロク協定)の締結・届出が不要で、この労働時間制を採る職場では長時間労働が発生しやすいです。
eisuを含め大手塾の多くは1年単位の変形労働時間を採用しているので、浜学園の労働時間制には違和感を覚えます。特に隔週休暇が無給という条件では、とても有給休暇は取れないでしょう。
実は浜学園の有給休暇規定にも、問題のある部分があります。この問題について触れると長くなるので、また別の機会に書こうと思っています。
休日休暇の日数は、それが確実に取得できることを含めて、働く人にとっては会社選びの重要な条件です。そうした意味では、浜学園の隔週休暇の問題は、本当の労働条件を秘匿して募集する「求人詐欺」に等しいのではないかと思います。浜学園に入社後初めてこのような条件があることを知った人は騙されたと後悔するしかないでしょう。
なお、実際とは異なる虚偽の求人情報を提示して求職者を騙して応募させることは、現在、改定された「職業安定法」に違反する可能性が高いです。詳しく知りたい方は当サイトの過去記事『求人詐欺防止の法律が改定されました』をお読み下さい。
リクナビ、マイナビなどの求人情報は、実際の労働条件を正直に記載してほしいです。実際とは異なる虚偽の労働条件を提示して求職者を集めることはもうやめてほしいです。
それから最近知ったのですが、浜学園の労働問題について解説した動画が、連帯ユニオン関西ゼネラル支部の You Tube に上がっていました。タイトルは『浜学園問題 年間休日7○日 月間労働時間170時間』です。興味のある方はご覧下さい。
浜学園で働く塾人の皆さんへ。
職場の労働環境に不満や疑問のある方は、私たちまで情報提供・相談下さい。
力になりますよ!