退職強要を受けた時の対処法
eisu社員、それから全国の学習塾で働く塾人の皆さんへ。
ほぼ2か月ぶりのブログ更新になります。前回の『退職強要されても退職届は絶対書くな!』では、退職強要(強引な退職勧奨)の背景や起こりやすい職場の特徴を中心に説明しました。今回は具体的な対処法として退職強要を受けた際の心構え、退職強要が起こる時期、退職強要する会社の思惑について説明します。
退職強要を受けた時、絶対にやってはいけないのは、一時の怒りや不安から後先考えずに退職届を出して会社を辞めることです。これは会社の思うツボです。ここは一度冷静になるべきです。
退職強要への対処は冷静さが必要
前回のブログを読んだ人から、自分に退職を強いるような会社にしがみついて何の意味があるのか。そんな会社はとっととオサラバしてもっと良い条件の会社に転職すべきでは。という意見をもらいました。
当然「会社から出て行け」と社員を無理やり退職させる会社で働く価値はないし、これからずっと働き続けたいと思う人はいないでしょう。当労組の考えもこれと同じです。つまり退職強要してくる会社など退職してまともな会社に転職したほうが精神的にも将来のキャリア形成にとっても有効だと考えます。
それでは、なぜ「退職強要されても退職届は絶対書くな」と説明したのかと言うと、退職後、不安定な立場に立たされるリスクがあまりにも大きいからです。
たとえば退職強要に応じて自分の意思で退職してしまうと「自己都合退職」となり失業手当がもらえるのは3か月後になります。その間は無収入です。また自分の意思で退職するので割増退職金など出ません。
こうした段階では、退職者は焦って、不安に駆られながら転職活動することになり転職先をじっくり探すことは不可能です。その結果、転職先がブラック企業だったというケースも残念ながらよく聞きます。
つまり「退職強要されても退職届は絶対書くな!」と言ったのは、自分が有利に退職するためには退職届を焦って書いてはいけない。退職に際して自分に有利な条件になるまで退職届にサインしてはならないという意味です。
ここで言う有利な条件とは、① 離職理由を「会社都合退職」にする。② 退職するかわりにそれまでの賃金の半年~1年程度、社歴が長ければ2年程度の退職特別手当を受け取る。の2つです。
会社から退職強要を受けた人が一般労働組合(ユニオン)に加入し最終的にその人が退職に応じる場合、ユニオンは①②の条件を念頭に会社と交渉します。
この2つの条件が揃うまでは絶対に退職届にサインしてはいけません。でも実際、退職強要を受けた多くの人が①②の条件なしで退職していきます。いまだに退職強要を行う企業が減らないのも、こうしたことが背景にあります。
退職強要する会社の思惑
大手企業が勤続20年以上の40代社員のリストラを行い、退職者の募集条件として割増退職金2000万以上を提示したら募集枠がすぐに満杯になった。というニュースをたまに見ます。このくらいの退職金が出るのなら退職に応じる人も多いはずです。
有名な大企業では、社員のリストラの度にこうした「資金」を出すことも容易ですが、普通の中小企業ではどうでしょうか? 無理に決まってます。ましてや退職強要してくるような会社はブラックなワンマン企業なので、退職者への余計な出費など絶対にしません。
また会社は普通、離職票に記載する退職理由を「会社都合」にすることを極端に嫌います。「会社都合退職」だと1か月後には雇用保険から失業手当が出るので労働者にとっては有利です。
しかし会社都合での離職が多い会社は、雇用保険の手続きをする際にハーローワークで「何かあるのでは」とチェックされます。会社都合退職が多いと、地域の労働局や労働基準監督署にもその会社の情報が共有されます。
そうすると労働局、労働基準監督署から「問題企業」として行政指導の対象として認知されたり、求人を出すのが難しくなることもあります。将来的には会社が労使折半で支払う雇用保険の料率にも影響が出るかもしれません。いずれにせよその会社の「評判」は低下します。
なので退職強要されてすぐに自己都合退職してしまうと、会社は上のような「余計なコスト」をかけずにいとも簡単に「辞めさせたい人」「いてほしくない人」を追い出せます。会社にとってはまさに願ったりかなったりなのです。これがいまだに退職強要がなくならない理由です。
見方を変えると退職強要とは、会社が雇用する社員に「自己都合退職」を強要する行為になります。労働条件の引き下げや職場でのいじめやパワハラなどを通じて、その人を会社に居づらくさせ、怒りや不安に陥らせることにより自らの意思で退職させることです。こうすれば会社はコストをかけず簡単に労働者をリストラすることができます。
その人が自分の意思で退職してくれれば割増退職金など支払う必要もないし、雇用保険上も「自己都合退職」となるので会社には何のリスクもありません。リスクを負うのは労働者なのです。
退職強要が発生しやすい時期
特定の社員をターゲットにした退職強要が行われやすい時期はいつでしょうか? それは年度末頃になります。ほとんどの会社は3月末が年度末です。4月から新人が入ってくるので辞めさせたい人を3月末で退職させても労働力が減ることはありません。
3月末が退職させるリミットだとすると一般的には前年10月~12月頃から退職強要のプログラムが進められますが、会社によっては3月末ギリギリになってから強引に行われるケースもあります。私の場合は4月初めでしたけどね。
ひとつ重要なことは、社内制度が大きく転換する時期に退職強要が行われやすいことです。具体的にはM&Aによって会社が買収された、経営者が変わった、賃金規定などの労働条件が大幅に変更された時期になります。私も、eisuで「年俸制」が2007年度から導入され、賃金規定が大きく転換(悪化)する直前に会社から退職強要を受けました。
この時、会社は年俸制の具体的中身を一切説明せず導入を決めたので不安感からeisuを退職する人が多く出ました。私はとりあえず様子見でしたが・・だから4月初めに本社に呼ばれて退職強要を受けたのかもしれませんね・・
会社の売上や利益が減少して経営が悪化したため社員の削減(リストラ)が実施され、その過程で退職強要が行われる場合もあります。この場合、社内で働いていれば会社の経営が悪化しているのは容易に判断でき、その予兆から、泥船から逃れる準備(転職活動)を前もってすることができます。
つまりもうひとつ重要なことは、自分が退職強要を受けるかもしれないという「予兆」に早めに気づくことです。職場で誰も口をきいてくれなくなった、無視される、上司が自分だけにパワハラをしてくる。自分だけに過大なノルマを与えられる。自分だけ労働条件を引き下げられた等があれば、自分は会社の「退職強要」のターゲットになったと考えるべきです。
ではそうなった場合、どうすべきか? 一言でいうと、すぐに退職に応じず、会社に一定のリスクを負わせ、自分にもっとも有利な形で退職すべきだと思います。そのためには条件を提示して会社と交渉する必要がありますが、これについては次回に説明します。
会社から退職強要されたら「転んでもタダでは辞めない」の精神で
会社にリスクを負わせて有利な形での退職を目指しましょう!