来年から失業手当が受給しやすくなります!

全国の学習塾で働く塾人の皆さん。それから他業界・異業種で働く皆さんへ。今回は塾人だけでなく、職場で雇用保険に加入するすべての労働者に当てはまる内容です。

例年、塾業界で働く人の退職時期は年度末の2月~3月です。この時期には他塾や他業界へ転職する人が現れます。転職先が決まっている場合は良いのですが、職場の労働環境かブラックだと、そこから逃れるために後先考えずに退職していく人もいます。

雇用保険では、自分の意思で退職(自己都合退職)した場合、失業手当(失業給付金)がすぐにもらえるわけではなく、一定の給付制限期間の経過後に給付されます。転職先を決めずに退職した場合は大きなデメリットとなります。

この給付制限期間の存在により、退職後に無収入期間があるため退職を思い留まる人も昔は多かったです。ところが現在、この期間がどんどん短縮されていることをご存知でしょうか。

失業手当の支給条件は退職理由で異なる

会社を自己都合退職したケースで説明します。

会社を退職すると会社から離職票が発行されます。失業手当(失業給付金)をもらうためには、これを自分の住所管轄地にあるハローワークに提出し求職申込などの所定の手続きを行います。手続き後、7日間の経過後、さらに失業手当受給まで2カ月の制限期間が始まります。

この給付制限期間中は失業手当の受給ができません。実は倒産や整理解雇を含む会社都合退職と自己都合退職とでは失業給付の支給条件には大きな差があります。

たとえば、会社都合退職の場合は7日間の待機期間後すぐに失業手当の受給が可能で、失業手当の給付日数は90日~330日です。一方、自己都合退職の場合は7日間の待期期間経過後、さらに2カ月は給付制限されて失業手当をもらえません。また失業手当の給付日数も90日~150日と少なめです。

つまり自己都合退職の場合、2カ月の給付制限期間の経過後、初めて失業手当が失業者の口座に振り込まれ、失業給付の受給が始まることになります。再就職先が未定なら、この間は無収入です。

来年4月から給付制限期間が1カ月になります

昔は自己都合退職すると、失業手当をもらうまで給付制限期間が3カ月もあり、手当がもらえるのは失業後4カ月目という時代が続きました。でも2020年10月以降、この給付制限期間が2カ月に短縮され失業後3カ月目から失業手当がもらえるようになりました。

そして来年2025年4月から雇用保険法が改定され、給付制限期間がさらに短縮され1カ月となります。つまり自己都合退職しても失業後2カ月目から失業手当がもらえるようになります

雇用の流動性・労働力の移動促進が背景

令和に入り、失業手当の給付制限期間が短縮され、労働者にとって失業手当が受給しやすくなった背景にはどのような理由があるのでしょうか?

この背景には政府の『 働き方改革 』の一環として、雇用の流動性を高めることで斜陽産業や労働生産性の悪い業界・企業から、より将来性のある産業に人材をシフトしていくことにあります。

つまり労働者を「転職しやすく」させ「成長産業に人材をシフト」させるために失業手当の待機期間を短縮したことは間違いないでしょう。

要するに、①転職しやすい社会をつくり、古い体質を残し成長が見込めない会社から、今後の成長が見込める会社に労働者の転職を促進させるため。②低成長企業から高収益企業に労働力を移動させ、より容易に雇用を創出したり雇用を増加させるため。の2つが目的です。

転職が容易になり雇用の流動性が高まると、体質が古く低成長かつ労働環境の悪い企業にとっては人材を募集しても集まらない、入社した人材がすぐに会社を見限り転職していく。という問題が発生します。近年、塾業界でも労働環境が悪い会社では同様の事例が増えています。

雇用する社員が会社から「逃げやすく」なると、労働者を酷使し使い捨てるようなブラック企業は淘汰されることになるので、労働組合としては世の中からブラック企業が減ることは良いことだと思います。

政府も自己変革が見込めないような企業や、人材不足が叫ばれる中、労働者を大切に扱わないような企業は消えてほしいと考えているようです。

失業手当受給の注意点

失業給付の制限期間が短縮されることは、劣悪な労働環境に悩みながら日々仕事をしている人にとっては、今までよりも有利な条件で会社を退職(逃げる)ことが可能になります。失業手当を確保したうえで退職するためにはいくつか注意点があります。

1.申請には離職票が必要

会社を退職後、失業手当を受給するためには自分の住所地を管轄するハローワークに、退職した会社から発行される離職票を提出し失業認定を受けることが必要です。離職票は従業員の退職後速やかに発行することが義務付けられてますが、ブラック企業の中には離職票の発行を遅らせるなど嫌がらせしてくる会社もあります。

退職した会社から離職票が発行されないと、失業手当の受給や求職活動もできなくなります。したがって、できるだけ退職日と同日に離職票を発行してもらうことが必要です。

2.職場での雇用保険加入が条件

失業手当を受給するには、原則として、離職(退職)日以前の2年間で、職場での雇用保険の被保険者期間が12カ月以上あることが必要です。つまり会社に雇用されて1年以上経過していれば受給できます。

雇用保険に加入しているかどうかは給与明細で確認できます。雇用保険の項目で毎月の給与から天引きされていれば加入者です。パート・アルバイトは勤務条件次第ですが、正社員として雇用されていれば受給資格はあります。

3.受給額と受給期間に注意

失業給付金(失業手当)の受給額・受給期間は、年齢や、その会社に勤務していた期間、賃金などにより異なります。原則として年齢が若い人ほど受給期間は短くなります。詳細は厚生労働省のウェブサイト等で確認して下さい。

4.転職が多い人は注意

過去5年間で3回以上、自己都合退職している人は、来年4月以降に自己都合退職した場合でも、給付制限期間は1か月ではなく3カ月です。過去何度も転職した人は注意して下さい。

5.受給には求職活動が必要

失業手当を受給するには原則4週間に1度、ハローワークで失業認定を受ける必要があります。失業認定申告書に求職活動の状況(4週間で2社以上の実績が必要)などを記入し認定を受けます。この時、ハローワークから失業認定されないと失業手当を受給できません。

つまり再就職が決まるまでの間、所定の給付日数を限度として、原則4週間ごとに失業認定 ⇒ 失業手当の受給を繰り返しながら次の仕事を探すことになります。

なお、失業手当の受給中にこっそりアルバイトなどを行うと「不正受給」とみなされ、それ以降の支給がすべて停止されることもあるので注意しましょう。

自己都合でも「会社都合」退職にできる

会社を自己都合退職する理由は人それぞれです。より条件の良い会社を見つけて転職する人もいれば、今の会社の劣悪な労働環境に耐えかね、そこから「逃げる」ため退職する人もいます。

しかし経営者からの退職勧奨、上司のパワハラ・セクハラ、職場のいじめ、長時間労働などから逃げるために退職すれば「自己都合退職」となり、失業手当の受給では有利にならないと思っている人が多いのではないでしょうか。でもこれは間違っています。

あまり知られていないことですが、現在、雇用保険の支給要件である「特定受給資格者」の判断基準が拡大され、上記事例が原因で労働者が自分の意思で退職した場合でも「会社都合退職」と認定されるケースが増えています。

以前のブログにも書いたように、退職するなら「自分に有利な退職」を目指すべきです。もし退職勧奨や職場のいじめ、長時間労働などで心身が壊れ自己都合退職しても「会社都合退職」にできるなら失業手当の受給ではかなり有利になります。

もしブラックな会社を自己都合退職しても、失業手当を賢くもらうために知っておいて損はない内容です。「特定受給資格者」の範囲や、認定される方法など詳細は次回説明します。

 

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