ミュゼプラチナム従業員の皆さんへ ①

最近、大手脱毛サロン『ミュゼプラチナム』で働く従業員の方の賃金が支払われておらず、3月末で全員解雇されたという報道を見るようになりました。ここは全国に約170店舗あり、従業員数3000名以上、売上高400億の大手企業です。

今回の問題の発端は、会社が従業員の社会保険料を滞納し、売掛金の一部を差し押さえられ賃金が払えなくなったことや、前経営者と現経営者が経営権をめぐり裁判で争っていることのようです。

会社の経歴を調べるとここ10年で経営母体が何度も変わっています。短期間に経営者がころころ変わる会社は問題が多いです。

SNSやYoutubeなどを見ても、1月~3月までの3カ月、賃金がまともに支払われたことはなく、3月末で全従業員が解雇されるなど悲惨な状況となっており、従業員の怒りや悲鳴が聞こえてきます。

『ミュゼプラチナム』は学習塾業界とはまったく別の業界ですが、このような会社の仕打ちには、労働組合eisuユニオンも大きな憤りを感じます。

そこで今回は、このようなケースへの対処法について説明します。私たちeisuユニオンが所属するユニオンみえ(三重一般労働組合)が今までにブラック企業に対しておこなってきた方法です。

『ミュゼプラチナム』のケースの問題点

従業員の立場で見た場合、今回のケースの問題点は次の2つです

1.退職しようとしても会社が離職票を発行してくれず、失業給付が受けられない。

2.会社が未払い賃金を払ってくれないので「賃金の立替え払い制度」を利用しようとしても、現状では会社が倒産していないので制度が利用できない。

ブラック企業の中には、退職者への嫌がらせとして離職票をなかなか発行してくれない会社もあります。この離職票がないと雇用保険の失業給付を受けることができません。

また賃金の立替え払い制度は、原則として会社が裁判所から破産宣告を受け、倒産しないと使えません。ミュゼの社員が労働基準監督署に訴えても監督署の担当官から「会社が倒産していないので制度は使えない」と説明されたという話も出ています。

ミュゼは3月20日から1カ月休業すると宣言していますが、4月20日以降に事業を再開する(できる)のかは現時点では未定です。かといって倒産するかどうかもわからず、極めて曖昧です。

ミュゼの社員は現状、何もできない状態に置かれています。でもこのようなケースでも対応策はあります。

対応策1 離職票がなくても失業給付の申請は個人でやれる

実は会社が離職票を発行してくれなくても、ハローワークで雇用保険の資格喪失の手続きは労働者本人でもできます。少し手間はかかりますが、こうすれば離職票がなくても失業手当がもらえます。以下のようにやります。

1.会社に離職票の発行を要求する。○月○日までと期限を設定して離職票を自宅に送るよう請求する。請求は内容証明郵便で会社に郵送する。⇒ やってもおそらく会社は無視するはず。

2.会社から離職票の発行がなければ、ハロワにその旨を申告する。ハロワから直接会社に指導が入る。⇒ これでも会社はハロワの指導に従わず、離職票を送ってこないかも。

3.こうした場合、ハロワは職権で会社に代わり離職票を作成できる。ハロワで雇用保険の資格喪失の請求手続きをする。

4.雇用保険資格喪失の請求手続きに必要な書類は、①雇用契約書 ②健康保険証 ④給与明細 ⑤勤務時間表 ⑥会社の賃金規定 ⑦就業規則など。ミュゼでの勤務を証明するもの、在籍中の賃金額がわかるもの(失業手当の算定に必要)です。また会社の通達メール文のコピーなども持参するとよいです。

5.雇用保険被保険者の喪失理由を記入する欄には「賃金未払い、賃金の遅配や欠配」と記入する。こうすると特定資格受給者に認定され「会社都合退職」となるので失業認定後、7日で失業手当がもらえます。

5についての詳細は、当サイト内の『自己都合退職を会社都合にする方法』をお読み下さい。

対応策2 賃金の立替え払い制度は利用できる

賃金の立替え払い制度は、会社が倒産した時、未払い賃金などがあれば国が代わりに立替えて支払う制度です。この制度を利用するケースは会社が倒産した場合が多く、ミュゼの社員が労働基準監督署に制度の利用を求めた時、担当官から「会社が倒産していないので利用は無理」と説明されたという話もあります。

ただ、ミュゼの社員にこう説明した監督署の担当官はかなりの知識不足だったか。それとも「面倒な仕事」をしたくなかったからこうした説明をしたと思います。私は主に後者が理由だと思います。

実は、賃金の立替え払いの制度は、会社が倒産していなくても、労働基準監督署長が「事実上の倒産」と認定すれば利用できます。要件は次の3つです。

1.事業活動の停止

2.会社が事業を再開できる見込みがない

3.会社に雇用する従業員への賃金支払い能力がない

現状、3の要件は満たしており、3月末で全従業員に解雇通告しているので、4月20日以降に事業を再開できるのかどうかも怪しいです。したがって1や2の要件も満たす公算が高いと思います。ただ事実上の倒産を認定するのは監督署なので、彼らの仕事が増えるのは間違いないです。そこでどうやって監督署を動かすのかが重要になります。

労働基準監督署は労働者の味方と思っている人が多いですが、監督署の主な仕事は、労働基準法や労働安全衛生法などの労働法規を会社と労働者に守らせることです。いわゆる公務員なので、できれば面倒な業務を抱えたくない。と思っている担当官も一部にはいます。

また監督署によっては、担当官の質があまりよくないところもあり、各地の監督署によって対応に差があるのも事実です当労組も2012年~13年の会社との「1年戦争」の時には、ほぼ毎日のように労働基準監督署に行って担当官と交渉していました。

その時の経験から言うと、監督署は「個人」では対応が悪いです。「集団」で行くと対応ががらりと変わります。したがってミュゼの社員が1人で行くより、各地にあるミュゼの支店単位で数十人の社員を集めて集団で監督署に行って要求・交渉したほうが良いです。

ユニオンみえの事例ですが、某会社を集団で解雇された従業員が監督署に相談に行ったとき、その対応が悪いので監督署の入口で集団で「座り込み」抗議して監督署を動かしたことがあります。

とにかく、監督署に重い腰を上げさせるためには、「集団」で監督署に行き、担当官と粘り強く交渉することが必要です。そうすれば監督署がミュゼの「事実上の倒産」を認定してくれる可能性が高くなります。

各地のユニオンに相談を!

報道や各種SNS、Youtubeなどを見て、ミュゼの従業員の中から労働組合を結成しようとする動きがみられないのを不思議に思います。これは現状では会社が事業を継続するのか? 倒産するのか? 解雇した従業員をどうするのか? 従業員の未払い賃金を支払うのか? など会社から説明がなく、今後の会社の方針がまったくわからないことも原因でしょう。

こうしたケースに対応できるのは労働組合しかありません。従業員を不当に扱い、不誠実な対応を繰り返す会社(経営者)に対抗するには「個人」では困難です。「集団」「組織」で対抗する必要があります。

ミュゼの社員の多くが各地のユニオン(一般労働組合)に相談、加入することをお勧めします。ミュゼで働く社員は全国で3000名以上いるそうですが、たとえばこの1割300名の社員が労働組合に加入し「ミュゼユニオン」を結成すれば大きな力を発揮できます。

労働組合について詳しく知りたい方は、当サイト内の『労働組合Q&A』をお読み下さい。学習塾業界で働く人向けの内容ですが、労働組合に入るとできることがわかると思います。

勤務地域にあるユニオン(一般労働組合)に、ミュゼの従業員が1人でも加入すれば、そのユニオンは会社と交渉する権利が生じ、会社への団体交渉、街宣などの抗議行動、ストライキなどが合法的に行えます。これらの権利は労働組合法、日本国憲法で認められています。

労働基準監督署と交渉する場合にも、ユニオンに加入していればかなり有利に進められます。対応が悪ければ監督署への圧力もかけられます。また会社への抗議行動やSNSでの発信を個人で行えば、威力業務妨害、偽計業務妨害に問われることもありますが、労働組合ならこれらが合法的に行えます。

多くのミュゼの社員が、各地のユニオンに加入し、各地のミュゼユニオンが連合して会社に対抗していけば、かなり有利に会社と闘えます。今後集団訴訟などで会社を提訴する場合も、ユニオンに所属していれば日本労働弁護団などの支援も得られ、マスコミへの記者会見などもできます。

大切なことは「集団で組織的に」「合法的に」「強い影響力を持って」やることです。

 

愛知県・三重県の店舗で働くミュゼプラチナム社員の方へ

私たちにご相談ください 力になりますよ!

 

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ミュゼプラチナム従業員の皆さんへ ①” に対して3件のコメントがあります。

  1. U より:

    日本労働組合総連合会に団体交渉の相談をしましたが、会社にお金が無いと思うから労働組合の結成には意味が無いと言われました。
    動いていないのではありません。労働組合にも見放されただけです。

    1. eisuユニオン より:

      外から見ている限り、ミュゼの今回の問題の発端は経営陣の内紛にあります。連合のような全国規模の大手労組はミュゼの経営陣の内紛騒動に巻き込まれたくないのでしょう。連合は全国的組織なので、全国にいるミュゼの社員が集団で加入すれば動いてくれるかもしれませんが、そうでないなら難しいと思います。

      地域のユニオン(一般労組)には相談しましたか? サイトで検索して勤務地にあるユニオンを探して相談することをお勧めします。eisuユニオンのサイト内にある「外部リンク」⇒「コミニュティ・ユニオン全国ネットワーク」のサイトからも探せます。なお相談する場合は次のことに留意して下さい。

      (1)電話やメールではなく、できれば組合の本部事務所に直接行って相談する。1人ではなく複数の人を集めて相談に行く。

      (2)現在の状況を説明する詳細な資料を持参する。その際、ある程度の法的知識があったほうが良いので、外部リンクのページにある「労働く純法違反を許すな!労働者」を読んであらかじめ知識を仕入れていく。

      (3)組合本部事務所に電話でアポを入れ、「組合の責任者・代表者」に直接相談したいと伝える。何人か集めて集団で行くのが良い。熱意をもって伝えることが大切です。もし対応が悪ければ、複数のユニオンに相談すると良いです。

      (4)大切な事は、今後どうしたいのかを明確にした上で相談に行くことです。1.ミュゼで今後も働き続けたいのか。2.ミュゼを辞めて失業手当を受給して転職したいのか。3.未払い賃金を取り戻したいのか。相談者の方針が曖昧だとアドバイス等もできないです。現状では、2と3に絞って相談した方がいいと思います。

      1. のん より:

        ミュゼスタッフでした。
        3月末に解雇と言われ退職。その後いきなり解雇でなく退職勧奨と訳のわからない動画での説明で混乱していました。詳しく説明ありがとうございます!

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