ミュゼの事例で見る労使トラブル時によくある社長の対応

現在、ミュゼの社長が社員向けのWeb説明会で「社員への賃金未払いや休業の原因は、会社の乗っ取りが原因で、もしこれがなかったなら今回のようなことはなかった」「こうなった原因は売上アップに貢献しない社員にも責任がある」と説明している動画がSNSにアップされています。
このあまりにも不誠実な社長の対応に多くのミュゼ社員は怒り心頭のようですが、労働組合の立場で言うと、これはどこの会社でも労使トラブルが起こった際、よくある社長の普通の態度・対応です。決して特殊なケースではありません。
社長(経営者)は逃げ回るのが普通
職場内で賃金未払い、賃下げ、不当解雇、退職勧奨、パワハラ、セクハラなどを発端とする労使紛争が起こり、そこの従業員がユニオン(一般労働組合)に加入し、ユニオンがその会社に団体交渉を申し入れた場合、よくある社長(経営者)の対応は次の3つです。
1.従業員やユニオンと直接対峙せず、逃げ回る。
2.自身の経営の失敗を認めず、反省せず、他に責任転嫁する。
3.従業員にも責任があると主張する。
これらは現在のミュゼ社長の従業員への対応にすべて当てはまります。1や2は ” 労使トラブルが過ぎ去るまでの時間稼ぎ ” としてよく使われ、この方法を取られるとユニオンが関係していない場合、従業員だけでは解決が難しくなります。
『ミュゼプラチナム従業員の皆さんへ①』で、ミュゼの従業員が地域のユニオンに加入し、各地で職場分会を作るのが良いと呼びかけたのは、労使トラブル発生時によくある社長の「逃げ得」を許さないためです。
自分が経営する会社で発生した労使トラブルに対し、社長はきちんと従業員に説明する責任がありますが、その責任を果たす社長はほとんどいないです。会社が雇った弁護士など ” 人任せ ” にして逃げ回るのが普通です。これは社長に限ったことではなく政治家などにもよく見られる態度ですね。
つまり ” 偉い人 ” の誰にも見られる対応です。人間の行動特性として、自分への責任追及からできるだけ目を背け、真摯に向き合おうとする人が少ない傾向があることも要因でしょうか。
でもミュゼのように、従業員への賃金未払いや休業期間の延長、顧客への対応などが全国的に大きく報道され、さらに従業員の生活を困窮させている場合には「逃げ回る」のは無責任です。社長は早急に事態を収める責任があります。
労働組合ならどうするか
逃げ回る社長に対し、従業員への説明責任を果たさせ、その会社で発生した問題(労使紛争)を解決に導くため、労働組合はいろいろな手段で社長とその会社に圧力をかけます。
そもそも労働組合法では、労働組合からの団体交渉の申し入れは、経営者(社長)は法律上、拒否できません。逃げ回ることは不可能です。
団体交渉では、社長は「多忙」を理由(単に逃げているだけですが)に、会社側代理人として弁護士が出席することが多いですが、決定権のない者を出してのらりくらりとした対応で時間を稼ごうとすることもあります。
こうした場合、労働組合は「社長は逃げてばかりいないで団交に出席せよ!」「社長は従業員への責任を認め、未払い賃金を支払え!」などと書いたビラを街頭で配布したり、SNS や YouTube で配信することもできます。
これらを個人でやると威力業務妨害や偽計業務妨害になりますが、主体が労働組合なら合法的にできます。また団体交渉で社長の経営責任を追及し、その結果を外部に公表することもできます。
ところで、会社の外で不特定多数の人にビラを配布する際に注意すべきは、「どうしたら読んでもらえるか」をしっかりと考えて作成することが大切です。
古い体質の労働組合のビラだと、会社への批判や従業員の主張が細かい文字でビッシリ書かれているケースもあります。でも読みにくいと手に取っても読まれることはほとんどありません。私でもこうしたビラは読みたくないです。
そこで街宣ビラにQRコードを付け、スマホで読み取ると公式サイトに遷移できるようにすれば、紙面一杯に主張を印刷する必要はないです。ビラには、キャッチーな言葉を短めに掲載し、関心のある人がサイトに遷移して本文を読むようにすれば効率をアップでき、検証も容易です。
もし資金に余裕があれば、ポケットテッシュと一緒に配布しても良いです。大事なことは、効率的な手段を使って、社長が逃げ回るのを阻止し、労使紛争をきちんと解決させるよう仕向けることです。
団体交渉でよくある社長の態度
中小企業の場合、団体交渉に社長本人が出席することもあります。団交に社長本人が出席する場合、社長の言い分の第1位は3になります。ユニオンに加入し団交に出席した従業員に「お前が悪い!あんたの責任でしょ!」と自分の経営責任を棚に上げて罵詈雑言を吐く社長もいます。
最初は組合側も黙って聞いてますが、社長を含む会社側の態度があまりにも悪いと、こちらも反撃に出ることがあります。
もう15年以上前の話ですが、ユニオンみえの団体交渉に参加したことがありました。そういえばこの時の相手は美容関係の会社でしたね。団交の席上で、社長がユニオンみえに加入した女性従業員に繰り返し罵声を浴びせ泣かせてしまったことがあります。
団交に参加していた私は社長の態度にキレて、その場で社長を罵倒して泣かせたことがありました。労働組合法では、団体交渉の席上で、相手(会社側)が労働組合員に対し、暴言や不適切な言葉を使った場合、こちらも暴言で対抗しても免責されます。
つまり法律上、団体交渉の席上に限定されますが、労組に加入した従業員が大声で社長を罵倒しようが、罵声を浴びせようが法律で認められているのです。ただし暴力はダメです。
不誠実な対応を繰り返す社長には、従業員側も、ときにはこうした強い態度を取ることが圧力になり、これまでの会社の対応に従業員が激怒していることを伝えられます。こうしたことも労働組合なら合法的にできます。
ちなみに団交後に、当時のユニオンみえ書記長のH氏から「団体交渉の席で、社長を泣かすまで追い詰めるな」と怒られ、当分の間、団体交渉を「出禁」になりましたw
全国のミュゼプラチナム従業員の皆さんへ
近くのユニオンに加入して社長の逃げ得を阻止しましょう!