Q1 学習塾にはどんな労働問題があるの?
近年、学習塾での長時間労働や残業代未払問題、大手学習塾社員の過労死問題などがマスコミ報道され、大きな話題となったのはご存知の方も多いと思います。学習塾におけるブラック労働は学習塾で働く正社員、アルバイト講師も含めたすべての人に共通する問題であると言えます。
ここ十数年、学習塾で働く人の労働環境は低下の一途をたどっています。年俸制導入による賃金引下げ、長時間労働、残業代の未払い問題、休日休暇や手当などの雇用条件の低下、中高年社員へのリストラ、定年後の再雇用社員への雇用条件の一方的な引下げなど、さまざまな問題が発生しています。
Q2 学習塾での労働問題の背景として、会社側の要因にはどのようなものがあるの?
学習塾での労働環境の低下や労使トラブル増加の原因は、どこにあるのでしょうか?実は学習塾独特の構造的要因があります。経営側(会社側)の問題としては、以下のようなことがあげられます。
■ 経営者が創業して一代で大きくした学習塾が多く、カリスマ経営者の強権による社内専制が起こりやすい。経営者の方針には逆らえない側面がある。社内の人事考課や人事配置などについても経営者による恣意的判断が入りやすい。
■ 創業者の個人塾から急成長した学習塾が多く、従業員数百名規模の大手塾でも内部体制は昔ながらの個人塾と変わらないこともある。社内規定が不備または社会の実情に合わないまま放置されている場合も多い。
■ 経営者や経営側社員が労働基準法、労働契約法などの労働法制について関心が薄い場合が多く、労働法制や働く者の権利を軽視・無視した経営が行われやすい。
■ 経営者や経営側社員によっては、労働組合に加入して労働環境の改善を要求する社員を「反逆者」と見なして会社組織を使って報復や弾圧を行うことがある。労働組合への対応次第で、労使対立や労使紛争が社外に拡大し大規模化・長期化する可能性もある。
■ 学習塾には「生徒第一」「生徒の志望校合格のため」という理念がある。これは現場社員にも共有されている。この理念が無制限に職場に適用されると、社員の全人格的労働や長時間労働、サービス残業の温床となる。また会社も社員の使命感や責任感にもとづく個人的努力に依存する体質がある。
ワンマン経営を抑止し、職場で働く人の権利や地位を守るためには労働組合が必要です!
Q3 学習塾での労働問題の背景として、働く側の要因にはどのようなものがあるの?
一方、学習塾で働く人の一般的傾向として、職場環境の低下や、労働条件を不利益に変更されても、我慢して泣き寝入りしてしまう人が多いです。その背景としては以下の事由があります。
■ 労働基準法、労働契約法などの労働法規についての知識が少ない人が多い。したがって職場の労働環境に疑問があっても、そのまま受け入れてしまう傾向がある。
■ 基本的に真面目な人が多いので、職場に問題があっても誰かを頼ったり相談することに抵抗を感じる人が多く、自分一人で抱え込んでしまう傾向がある。
■ 校舎単位の人員配置により社員間で職場全体の労働問題が共有されにくい。また仕事外のことでは職場内の横のつながりが弱くなりやすい。したがって社員が団結して経営者に抵抗することが困難になる。
■ 仕事や生徒への使命感や責任感が強い人が多い。労働問題が起きても生徒や他の社員に迷惑がかかると思って泣き寝入りするか職場を去ることを選ぶ傾向が強い。
■ 学習塾労働者を対象とする全国的な労働組織が全くない。労働組合がある学習塾もほとんど皆無であり、職場に労働組合を作って経営者に職場環境の改善を要求したり、経営者に抵抗する方法を知らない。
労働組合を作れば我慢や泣き寝入りする必要はありません!
Q4 労働組合って何ですか?
労働者が、自らが働く職場の労働環境の改善や労働者の権利向上を目的に結成した労働者のための組織です。
日本国憲法28条には「勤労者の団結する権利および団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と規定され、労働者の権利として「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」を認めています。中学3年生の公民の授業ではこれらを「労働三権」と教えますが、労働組合はこの労働三権を行使する主体としての側面を持ちます。
団結権によって、職場の労働環境をより良くすることを目的として労働者が労働組合を結成する権利を憲法で保障しています。また労働組合の権利や組合活動を規定する法律として労働組合法があります。
労働組合による労働者の権利行使は、憲法・労働組合法に規定されています!